表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/112

第95話

 直章(なおあき)のアドバイスを受けた数日後、ネット店舗から次々と商品が到着し、健太は着々と確認をしていく。その中で、飴玉から綿菓子を作る玩具が気に入ったようで、健太は何度も試していた。


「最終的には本格的な綿菓子製造機を買ってもいいかもな。え? こんな安いのか? だったら飴玉から綿菓子作るのより、こっちの方がよかったな。よし! 買ってしまおう、ザラメもレインボーカラーがあるから、白も足して8色を購入しよう。それと本命の太陽光発電機だな! これは向こうで大活躍してくれるはず。5台も買ったからな」


 健太は高く積まれている太陽光発電機を、綿菓子を食べつつ呟く。たまたまネットで見つけた太陽光発電機だったが、性能は思ったよりいいらしく、災害時にも利用されるタイプのものだった。


「これだけ発電機があれば、ステンカ殿も気にせずにコーヒーを淹れられるな。他にもなにか持って行くべきか? 電化製品が使えるなら、かなり便利になるよな?」


 健太は1人で呟きながら、ネット検索を続ける。


「へえ。こんなのがライトになるのか? ほうほう。水を浄化するのもあるんだな。いや。これは俺の水魔法でなんとかなるな。お? これも注文しよう。これもいいな。電池でドリップコーヒーを淹れられる? 面白いな。生麺タイプのうどんもあるのか。エルミに食わせてやるか」


 テンションが高くなった健太は翌日到着するであろう荷物の多さに気付かないまま、次々と注文をしていくのだった。


 ◇□◇□◇□


「よ、よし。問題ない。問題ないはずだ。問題ないよな? 大丈夫だ」


 健太はアイテムボックスに収納されている中身を確認しながら、自分に必死に言い聞かせる。翌日に配達された量は膨大で、配達に来た運送業者はかなり疲れた顔になっていた。

 平謝りしながら一緒に荷物を下ろして、飲み物とパンにお菓子の入った袋を渡して労い(ねぎらい)つつ送り返した後に、健太はアイテムボックスに詰め込んだ物を確認しながら容量のチェックをしていた。


「まだ収納出来るよな? エルミの好きなパンを買いに行かないと」


 健太は購入した品が全て届いている事を確認した上で、車を出すと行きつけのパン屋に向かった。


「店長! 例の男爵が来られました!」

「なに! あの方か? いま焼き上げているのはいつ完成だ? 10分? 分かった。皆は増産体制を取ってくれ!」

「「「了解です!」」」

「え? あの噂の?」

「そうみたいよ。ここ最近、大量にパンを買っているらしいわよ。どこかの施設に寄付してるとも聞いたわ」

「そうなの? いい人なのね」


 健太がパン屋に入った瞬間、それまでの空気を一変するかのように静寂が包み、再び活気に満ち溢れた。困惑している健太をよそに、工房は慌ただしくなり、お客からは尊敬の眼差しが注がれていた。


「お客様。店長の大森と申します。先日は、当工房のパンを大量購入して頂きありがとうございました。今日はどのくらい必要でしょうか?」


「あ、ああ。名刺までありがとうございます。今日は食パンを20個と……。20斤と言うのでしたね。それと、数が多いのを購入しようかと」


 名刺を受け取った健太が、店内を眺めつつ食パンが大量にあるのを見付けて注文する。さらに追加注文をされた店長は、在庫を計算しながら話し出した。


「か、かしこまりました。食パンでしたら、もうすぐ出来上がるのがありますので、そちらを準備させて貰いますね。それと、あんパンでしたら1時間ほど時間を頂けるのでしたら100個は用意出来ますが?」


「そうですね。では、それでお願いします。ちなみに前もって注文をしておけば取り置きは可能ですか?」


「もちろんです。男しゃ……。いえ、お客様。数日前にご連絡頂けると助かります。それに合わせてシフトも組みますので」


 店長の言葉に不穏な名称が入っている事を感じながらも、健太は次回からは事前に連絡する事と、出来上がるまで店の前で待つと伝えた。


「あの店長さん。絶対に『男爵』と言おうとしたよな。その内に伯爵になるのか?」


 健太は店の前の喫煙所で電子タバコをふかしながら呟いていた。店内が慌ただしくなった事に申し訳なく思いながら待っていると、小さな子供がやって来て健太を指さした。


「パン男爵!」

「こら。駄目でしょ! ごめんなさい」

「えー。でもいい人なんでしょ?」

「初めて会った人を指さしたら駄目でしょ? それに男爵は自分が良い事をしているのを知らないかも知ないでしょ」

「あ、あの? なんの話しで?」


 突然指さされた事にビックリし、パン男爵と呼ばれた事に硬直していると、母親が申し訳なさそうな顔で謝罪してきた。健太が困惑気味に質問すると、母親が噂を教えてくれた。


「いえ、大量にパンを買われているのが噂になってて、1人で食べられる量ではないでしょ? だから、施設の子供へ慰問活動しながらパンを寄付をしているのではと」

「おっちゃんはいい人なんだよね?」


 キラキラとした目で見てくる子供に、健太は苦笑しながらなにかを閃いたようで水魔法を試してみる。魔力を調整しながら撃つと、水芸のようなアーチを描いて太陽光に当たった水が虹を作る。

 歓声を上げている子供の様子に気分良くしたのか、両手から水を出したりアイテムボックスを活用して手品師のような事をしていた健太の周りには人だかりが出来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ