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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第87話

「じゃあ、孤児院の運営状況を聞こうか。最近、困っている事はないか? 苦労している事は? 子供の数はどうなっている?」


 健太は、ルイーゼに案内された部屋でソファに座ると次々と質問を始める。性急すぎる健太にエルミは苦笑を浮かべながら、ルイーゼに話かけた。


「ルイーゼさんは、コーヒーを飲まれた事はありますか?」


 唐突な質問にルイーゼは一瞬キョトンとしたが、大きく(かぶり)を振ると否定してきた。


「いえ。そのような高級品を飲む機会はありませんでした」


「ケンタ様。せっかくですので、ルイーゼさんにコーヒーを飲ませてあげませんか? 急がなくても大丈夫ですよ。ゆっくりと話をしていきましょう」


「そ、そうだな。ちょっと焦ってたようだな。すまない、ルイーゼさん。今すぐに……。いや、ゆっくりと用意をするから待ってもらえるだろうか?」


 自分が焦っている事に気付いた健太は、エルミに感謝の視線を向けると、アイテムボックスからコーヒーを淹れるための器具を次々と取り出す。


「これはサーバーと言って、ここにコーヒーが溜まる。それと、こっちはドリッパーにペーパーフィルター。ここにコーヒーの粉を入れてからお湯を注ぐとコーヒーが出来上がります」


 健太は器具の説明をしながら、ペーパーフィルターの底と側面を折り、ドリッパーに軽く抑え付けるようにセットする。そして粉を取り出すとルイーゼに匂いを嗅がせた。


「こんな感じの匂いです。嫌ではありませんか?」


「初めて嗅ぎますが、いい匂いです。これがコーヒーの匂いなのですね。素敵です」


 ウットリとした表情を浮かべているルイーゼに気を良くした健太は、お湯を入れた後の蒸らし時間を使って、コーヒーに合うお菓子を取り出して並べ始める。


「こっちはコーヒーと一緒に食べると美味しいお菓子になっていて、色々な種類があるので試してください」


「えっ? ケンタ様? 見た事ないお菓子があるのですが?」


 次々と並べられるお菓子にエルミが驚いた顔になる。健太は元々、エルミに用意したお菓子である事を告げながら安心させるように話し出した。


「エルミの分は別に用意してあるから大丈夫だぞ。パンも大量にあるから安心してくれ」


「まるで私が、食いしん坊みたいじゃないですか!」


 健太の言葉にエルミが頬を膨らませると、仲の良い二人を見てルイーゼは楽しそうに笑った。


「お二人を見ていると羨ましい気持ちになります。婚約者なんて私は忙しくて居ませんし……。い、いえ! お二人が羨ましいだけであって、妬ん(ねたん)でいるわけではありませんよ!?」


「分かってますよ。ルイーゼさんには意中の彼は居ないの?」


 婚約者との言葉を健太が否定する前に、エルミがルイーゼに笑いながら話しかける。


「いませんよ。男性との出会いがない職場ですからね」


「幼馴染とかいるじゃないか?」


 ゲンナディーを推薦しようと健太がさりげなく話しかけると、ルイーゼの頬に朱が差した。


「そ、そうですね。幼馴染がいましたね。最近は会う事が少ないですが」


「やっぱりそうだよな。ゲンナディーにもチャンスがあるのじゃないのか?」


 ルイーゼの言葉に健太は小さく頷きつつ呟く。そして、ゲンナディーの為に一肌脱ごうと気合いを入れた。


「今回の孤児院への対応は、ゲンナディーにも全面的に協力して貰う予定になっています。彼の協力があれば、より成功に近付くでしょう。彼も頑張ってくれると言ってましたよ」


「まあ、ゲンちゃんが? それは嬉しいですね。それとケンタ様。私への敬語は不要です。異世界の勇者であるケンタ様に敬語を使われると恐縮しますわ」


 健太の言葉にルイーゼは嬉しそうに感謝の言葉を述べながらも、話し口調を変えるように伝えてくる。エルミも健太の口調が気になるのか、頬を膨らませて注意をしてくる。


「私に話している感じで大丈夫ですよ。そもそも、私には普通に話して下さるのに、ルイーゼさんには敬語を使うなんて変ですよ。私とルイーゼさんは同い年ですよ?」


「え? そうなのか? エルミの方が若く見えるな」


 二人を見比べながら感想を述べた健太の言葉に喜びの表情を一瞬浮かべたエルミだったが、何かに気付いたのかハッとした表情になり眉を寄せて質問をする。


「ケンタ様? 私の方が『若く見える』との事ですが、それって落ち着きがないと言われているのでしょうか?」


「い、いや。そんな事はないぞ? なぜそう思ったんだ?」


「なぜ首を傾げながら、後ずさりしながら疑問形なのですか!? それは肯定と同じですよ! ちょっ! ケンタ様! どこに行くのですか? 逃げないで下さい!」


 エルミが詰め寄ってくる勢いに健太は明後日の方向を向くと、そのまま部屋から出て行った。制止も聞かずに逃走を図ったのを見送りながらルイーゼが可笑しそうに呟く。


「男の人は都合が悪くなったら逃げ出すのでしょうか?」


「かも知れませんね。お父様も良く逃げ出しますね」


 疲れた表情のエルミに、ルイーゼも難しい顔をしていたが、二人は顔を見合わせると笑い合った。

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