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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第85話

「返事はどのくらいですればいい?」


 健太がエルミに確認する。特に急がなくてもいいが、1週間後には返事が欲しいとの言葉に頷くと、気になっている点を健太は確認する。


「そうすると、実行しようとしている孤児院の施策は?」


「そちらは問題ありません。ケンタ様が考えておられる通りに、気になさらずに実行してください。お父様から了承をもらっておりますし、ケンタ様に委任状が発行されております」


 エルミが懐から、羊皮紙を取り出して手渡す。ほのかに暖かい羊皮紙を開きながら、健太は内容の確認を始めた。


「なになに。……。うん。読めん。エルミ。すまないが、こっちの字は読めないようだ。代読してくれないか?」


「そうでした。こちらとケンタ様の国では文字が違うのでした。では……。『孤児院改善を異世界の勇者ケンタ殿に託す。掛かる費用は領主が全て受け持つ』と書かれています。後は、お父様の署名が最後にあります」


 続きがあると思っていたが、それ以上はなにもなく沈黙が続く。健太は読み上げた内容の短さに思わず首を傾げた。


「それだけ?」


「はい。文章が短いのは全権委任しているからです。通常なら細かな条件が、大量に書かれます。短い文章は、お父様からの信頼だと思って頂ければ」


「なるほどな」


 改めて羊皮紙を受け取った健太は、読めないながらもステンカから信頼されているとのエルミの言葉に頬をほころばせた。


「全権委任なら張り切ろうじゃないか! さっそく孤児院に向かうとしよう。ここから近いのか?」


「そうですね。ここから10分歩いた場所にあります。今ならゲンナディーと、ミナヅキちゃんが居るはずですよ」


 2人で孤児院に向かって歩いていると、領民たちから声がかかる。ほとんどは、先日のチョコレートパーティーへのお礼であり、その他には2人がデートしているとのからかいであった。


「エルミ様にも、ついに春がきましたか。良いことだね。ばあさんや」


「そうですねえ。おじいさん」


「ち、ち、ち、違いますよ! デートじゃないです! まだ、正式にお付き合いの約束はしてません!」


 2人が歩いていると年取った夫婦に声をかけられる。本当に嬉しそうにしている年取った女性に、エルミが慌てて否定を始めた。だが、老夫婦には照れているようにしか見えなかったらしく、さらに微笑ましそうに眺められる。


「ふふふ。若いっていいですね。おじいさん」


「そうだな。エルミ様の事をお願いしますよ。ケンタ様」


 老夫婦と健太に微笑ましそうに見られている事に気付いたエルミは、真っ赤な顔でワタワタしながら頬を膨らませると、そのままの表情で健太と腕を組み始めた。


「お、おい」


「いいのです! そうですよ。ケンタ様とはデート中です! そうですよね!? おじいさん。おばあさん」


「はっはっは。その通りですよ。エルミ様」


「本当に若いっていいですね、おじいさん。私達も昔を思い出して腕を組みましょうか?」


 エルミの様子にニコニコと笑いながら、年取った女性が夫である男性の腕をとる。男性も恥ずかしそうにしながらも拒否することなく受け入れると、2人に挨拶をして去っていった。


「素敵な夫婦だな。ところでエルミさんや。いつまで腕を組んでいるんだ? 無理しなくていいぞ。こんなおっさん相手に」


「いいのです! 私が組みたいのですから、気にしないでください」


 真っ赤な顔のまま問題ないと言い放ったエルミに、ケンタは苦笑しながらも腕に当たっている柔らかさに文句があるわけもなく、そのまま受け入れるのだった。


 ◇□◇□◇□


『あー! エルミ様とケンタ様が白昼堂々と腕を組んでるー!』


「えっ? 本当っすか? 本当だ! ステンカ様に報告しないと駄目な案件っす!」


 2人が孤児院に到着した際に第一声だった。さすがにエルミが腕を組むのを止める。そして、ゲンナディーに近付くと耳元で何かを囁いた。


「え? ほ、本当っすか!? なるほどっす。……。まだなんっすね。なるほど。なるほど」


「おい。なにを話しているんだ?」


「ケンタ様は気にしなくっていいっすよ。これからもよろしくお願いするっす!」


『よろしくなのー』


 怪訝な顔をしながら確認してきた健太に、ゲンナディーが気にしないように伝える。その横で、話が分かっていないミナヅキも楽しそうに会話に参加してきた。


「おい。なにをよろしくなんだよ?」


「気にしなくっていいっすー!」


『いいのだよー』


「いいのです」


 健太は3人の様子を眺めつつ、これ以上聞けないと感じると、あきれた表情になりながら話を変える事にする。


「取りあえず、孤児院の中を案内してもらおうか。ここに来たのは自分の目で孤児院の現状を見たかったからだ」


「なるほど。ステンカ様と同じっすね。自分で見た事を信じて行動するのは素晴らしいっすよ!」


『素晴らしいのだよー。さすがはケンタ様ー』


 目をキラキラとしながら何度も頷いているゲンナディー。それも真似するように、ミナヅキも飛び回りながら、健太を賞賛する。そんな2人の様子に苦笑をしながら、案内するように伝えた。

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