表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/112

第82話

異世界側の食べモンが増えすぎて把握がががが……。そろそろ一覧表を作った方がいいのかな?

「それでなにを思いついたんっすか?」


 ミナヅキに頭を撫でられている状態でゲンナディーが確認してくる。そんな二人の微笑ましい姿を見ながら健太はエルミも近くに呼ぶと話し始めた。


「孤児院についてだが、今の有志による支援ではなく仕事を与える事にする。そして他にも小さい子供がいる家庭にも声を掛けようと思う」


「孤児院以外の子供にも声を掛けるのですか?」


 エルミの言葉に健太は頷くと説明を続ける。


「そうだ。ゲンナディーの話を聞いていると5才の子供でも働いているそうじゃないか。15才で大人になるなら、それまでは子供だろ? だったら子供達は一か所に集めて職業訓練のような事をさせたらどうかと思ったんだ。ただ、それだけだと子供を労働力にしている親に賛同してもらえないだろう?」


「そうですね。年齢関係なく子供も労働力ですからね。こちらから呼びかけても頷いてくれないでしょう」


「だったら食事の無償提供と、職業訓練をする事で現金を支給するのはどうだ?」


 難しい顔をしているゲンナディーとエルミだったが、代表してエルミが職業訓練の難しさを告げると健太がさらに提案をしてきた。食事の無償提供と現金支給との魅力的な案を聞いてゲンナディーは納得した表情を浮かべたが、エルミはさらに苦い顔になった。


「いい考えだとは思いますが、それを行う資金がありません」


「最初の資金は俺が用意するよ。こっちで稼がせてもらっている金額は莫大だからな。少しはこの世界で還元したいんだ。それと、職業訓練で作る品などを売る事も考えよう」


「ケンタ様……」


 健太からの資金提供の提案にエルミがうっとりとした表情になる。横で話を一緒に聞いていたミナヅキだったが、話が難しすぎたのか欠伸をしながらゲンナディーの頭の上に乗った。


『ケンタ様ー。難しい話は後にしてー』


「はっはっは。そうだな。そうしよう。ところで接待する側だったから疲れただろう? 食べたりない物があれば言ってくれ。今ならなんでも出せるぞ?」


『わーい! ケンタ様大好きー。スープが飲みたいー。食べ物も出してー』


 健太の言葉にミナヅキは上機嫌になると、空中を飛び回りながら感動を表現する。


「よしよし。じゃあ、スープスパとラスクを出そうか」


 アイテムボックスからインスタントスープとラスク取り出して、ミナヅキにラスクを放り投げる。器用にキャッチしたミナヅキは封を開けると1枚取り出して食べ始めた。


『サクサクしてて美味しいー。ゲンナディーも食べていいよー』


「独り占めする気だったんすか? もちろん俺も食べるっすよ! んっ! 美味しいっす! サクサクしてて甘みがあって。でも口の中がパサパサするっすね」


「ああ。そうだったな。じゃあ、スープが出来上がるまではジュースでも飲んでてくれ」


 オレンジジュースと紙コップを取り出して手渡す。ペットボトルを受け取って硬直したゲンナディーの様子に首を傾げていると、再起動したのか絞り出すように話し出した。


「これってオウレンジーのジュースっすか?」


「オウレンジー? オレンジジュースだぞ?」


 微妙に違うニュアンスを訂正した健太だったが、ゲンナディーには通じなかったようで突然エルミに向かってオレンジジュースの入ったペットボトルを掲げた。


「エルミ様! オウレンジーですよ! あの伝説の!」


「えっ? リイインゴウの上位種のオウレンジー? うそでしょ! ここ2年は近隣での目撃情報はないわよ? 見せて! ……。ほ、本当だわ。まさか王城でもめったに見られない逸品を出されるなんて……。ケンタ様の孤児院に対する熱い思いを受け取りました! 私達の持てる力を出し切りますのでなんでも――」


「いやいや! だからオレンジジュースだからな! その伝説のオウレンジーとの名前の木じゃないぞ! オウレンジーは木だよな? と、ともかく俺の国ではありふれた果物のジュースなんだよ!」


 テンション高く決意表明を始めたエルミ。健太の決意表明だと勝手に勘違いして感動のあまり泣き出したゲンナディー。意味は分からずに踊り続けるミナヅキ。何事かと集まりだした領民達。健太は周囲に集まった者への説明に一苦労するのだった。


 ◇□◇□◇□


「ふー。酷い目にあった。それに誤解も解けてなかったな。どうしたものか……」


「す、すいません。ケンタ様から何度も説明されて理解はしましたが、やはり私達には高級品のオウレンジーにしか見えません。ケンタ様はオウレンジーの果汁をたくさんお持ちですか?」


 苦笑している健太に謝罪しながらもオレンジジュースの数量を聞いてきたエルミに、アイテムボックスを確認して答える。


「んー。この大きさで11本ほどだな。1本は飲んだからな」


「そ、それほどの数が? よろしければ1本をマリアンナお姉様に送りたいのですが頂けますか? ゲンナディーに運んで貰います」


「ああ。それだったらラスクも一緒に送って欲しい。ミズキさんにもいるよな? 2本ずつあればいいかな?」


 エルミの言葉に健太は了承し、大精霊のミズキへのお土産としても頼むとアイテムボックスから4本を取り出して渡した。


 エルミの依頼でオレンジジュースとラスクを運んだゲンナディーとミナヅキは、ミズキとマリアンナから感謝の言葉と盛大な歓待を受けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ