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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第79話

「こほん。いいか皆の者。今日の集まりはケンタ様のご助力によるものである。 まずケンタ様だが、我が娘エルミにより異世界から来て頂いている勇者様である。皆に迷惑を掛けている塩問題を解消するため、異世界から大量の塩を運んでくださった。また隣の領地問題も解決されている。そんなケンタ様が……」


  ステンカの挨拶が始まり、最初は話しを聞いていた領民達だったがいつまで経っても終わらない挨拶にウンザリし始める。そして目の前から漂ってくる甘い匂いをお預け状態にされ、5分も経つと敵意混じりの視線をステンカに投げ始めた。


「皆についてはその優しき御心に感謝を捧げ、また我が領に来て下さった貴き精霊様であるミナヅキ様の――」


 一同の視線に気付かずステンカが話を続けようとすると空から怒りの声が落ちてくる。


『話が長いー。早く乾杯するのだー』


 急きょ作られた壇上で乾杯の挨拶をしているステンカをミナヅキが一刀両断する。愕然とした表情で固まったステンカを領民達は爆笑しながら拍手をし、ばつの悪い顔をしながらステンカは健太に場所を譲る。


「す、すみません。ミナヅキ様。で、ではケンタ様に交代しますね」


『うむ。苦しゅうない!』


「ステンカ殿。申し訳ない」


 がっかりした表情で壇上から降りたステンカの肩を叩きながら謝罪すると、健太は壇上から自分を見ている領民達を見渡す。老若男女かかわりなく全員が笑顔で嬉しそうな顔をしており、自分の行動で塩問題が解決した事を肌で感じていた。


「塩問題が解決したようで良かった。さっそくだが乾杯!」


『かんぱいー。みんなもかんぱいー』


「「「乾杯ー」」」


 長い挨拶を覚悟していた領民達は健太の挨拶が一瞬に終わった事に最初は唖然としていたが、ミナヅキの挨拶で我に返ると再び爆笑しながら乾杯の音頭をとる。


「ケンタ様! 素晴らしい挨拶だぞ!」

「次も短めでー」

「早く食べたいから最高だぞー」


 健太の挨拶が短い事に賛辞が沸き起こる。しばらく様子を見ていた健太が嬉しそうに返杯しながら横を見ると、体育座りをしているステンカがいた。


「どうせ話が長いです。その割に内容は薄いですよ。分かってますよ。知ってますよ。でも領主としての責務が……」


「お父様の挨拶はいつも長いのです。ケンタ様のように短めがいいのですよ。ねえ。ケンタ様?」


 いじけているステンカにエルミが止めを刺しながら笑顔を向けてくる。さすがに不憫に思った健太はフォローを始めた。


「だが、長い話は人生経験の裏打ちされた含蓄(がんちく)があると思っているぞ。お年寄りの話しは経験則が多いから……。あれ? ステンカ殿?」


「と、年寄り……。いいのです。私はケンタ殿の様に若くはないですからね。ですが面と向かって年寄扱いされるのはつらいですな」


「い、いや。そんなつもりでは……」


 健太の言葉にステンカは弱々しく呟くと、立ち上がりトボトボと屋敷に戻っていく。慌てて後を追おうとした健太だがエルミに止められた。


「いいのですよ。ケンタ様」


「いや、さすがにダメだろう。あの背中に哀愁が漂って……」


 エルミと話していた健太が視線を向けと、そこにはチラッとこちらの様子を眺めているステンカがいた。そして視線が合うと慌てて肩を落とすとトボトボと歩き出し、立ち止まり振り返えると再び健太に視線を向ける。


「なるほどな。ほっとくか」


「そうですね」


 健太とエルミはステンカに背を向けると領民達が集まっている場所に向かった。


 ◇□◇□◇□


『あー! ケンタ様。あのエーセーボールーもっと欲しい』


「ミナヅキちゃんにもらった玉が美味しかったんっすよ! ケンタ様! もっと欲しいっす!」


 ミナヅキとゲンナディーが健太の元にやってくると満面の笑みを浮かべておねだりをしてくる。段ボールで箱買いしていた健太は気前よくアイテムボックスから取り出すと二人に渡した。


「食べ過ぎには注意だぞ」


『分かったー。ケンタ様。だいすきー』


「感謝っす! よし。孤児院の子達に持って行くっすよ!」


『行くぞー』


「ちょっと待て。孤児院があるのか?」


 健太の質問にゲンナディーが立ち止まると答える。


「あるっすよ? 今は5人くらいいるっす」


「そうなのか? 孤児院があるのか。経営は上手くいっているのか? 俺からも差し入れを頼んでも良いか?」


 アイテムボックスからパンやお菓子を多種取り出し、その他にも金貨や竹トンボやけん玉などを用意してゲンナディーに手渡す。


「なんっすかこれ?」


「これは竹とんぼと行ってな。こうやって使うんだよ」


 竹とんぼをみて首を傾げたゲンナディーに使い方を説明する健太。実践した方が早いと手を合わせた状態から前後に動かして手放す。


「おお! 凄い! 飛んだ!」


『おぉー。待てー』


 飛んでいく竹とんぼを見て感動するゲンナディーと、竹とんぼを楽しそうに追いかけていくミナヅキ。健太も子供時代を思い出し懐かしみながらけん玉も使い方を教えた。


「ありがとうございます。子供達が大喜びすると思うっす!」


 両手いっぱいに竹とんぼとけん玉やお菓子を抱えたゲンナディーと、後ろに付いていくミナヅキを見ながら健太は何か出来ないか考え始めた。

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