第78話
シュトロベリアル:幼生体は小さく、高級品として人気がある。だが成体はイノシシほどの大きさであり、普段は大人しいが、幼生体に危害を加える者。また出産前後は近づくだけでも容赦なく攻撃を加えてくる。味は甘みが多く、柔らかいが傷みやすい
「なるほどな。このイチゴがシュトロベリアルと呼ばれている魔物に似てるわけだな。だが、これを見てもらえれば分かるだろうが、シュトロベリアルではなくてイチゴだ。そこを間違えないようにな。日本の価値で言えば、このパック一つでエルミが食べているパンと同じ値段だ」
「えっ! そ、それほど高級品なのですか? このパンも恐ろしい討伐レベルなのでは?」
健太がスマホの百科事典アプリを見せながら説明する。それを見ながらシュトロベリアルとは違う事が分かったエルミだったが、自分が食べているパンと同じ値段だと聞くと青ざめていた。
「いやいや。パンを討伐とはおかしいだろ? えっ? おかしくない? そもそも、どうやってパンを作るんだ?」
「はい。養殖だと農場で飼育されたのを使いますが、天然ものだと――」
「よし。ちょっと待とうか。まず養殖と天然とか、飼育される単語の説明をしてもらお……。いや。やっぱり止よう。次からこっちでパンが食べられなくなる」
健太の問い掛けにエルミが嬉しそうに説明を始めたが、嫌な予感がした健太が途中で止める。そして話を変えるようにアイテムボックスから次々とイチゴを取り出した。
「日本で色々と買ってきたが、生き物は収納出来なかったんだよ。だが植物なら入れられから、次回は食物の種を買ってきた方がいいかもしれないな。……。ああ。イチゴをの話しだったな。そんなに喜んでもらえるなら、これからも定期的に持ってくるから。今回は比較的小さな品種だが、今度は大粒のイチゴを買ってくるからな」
「これよりも大きなシュトロベリアル……。じゃなくてイチゴでしたね。甘みも強いとの事ですので楽しみにしております。そろそろ準備の時間ですね。チョコレートフォンデュの準備をして頂いてよろしいでしょうか。参加人数は100人ほどです。本当に大丈夫ですか? 今回でチョコレートを全て使い果たす事になりませんか?」
心配そうなエルミに、健太は安心させるように笑いかける。
「気にするな。さっきも言ったが、こっちで稼いだ金貨は向こうのお金と交換ができる。それも高い換金率だぞ。このチョコレートなら金貨2枚で100袋以上は買える。今まで物凄く稼がせて貰ったからな。エルミや領民達に少しでも還元させてくれ」
「ケンタ様……」
照れくさそうに気遣いを見せる健太の横顔をウットリとした表情で眺めながら、エルミは軽く頬を染めつつ感謝の言葉を述べた。
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「みんなー。食べる準備はいいっすかー。お土産は後で渡すっすよー。それと今日来れなかった近所の人が居たら教えて欲しいっす!」
『みなのものー! 準備は良いかー! もう始めるのだぞー。ケンタ様に感謝をするよーにー』
お土産があるとの言葉にステンカの屋敷前に集まった領民達から大歓声が上がる。そんなゲンナディーとミナヅキの言葉を聞きながら、健太は苦笑しつつアイテムボックスから大きめの平鍋を数個取り出した。
「量はあるから取り合いをせずに子供やお年寄りから食べさせてくれ! ちゃんと監視しているからな。頼んだぞ! ミナヅキ!」
『任せるのであるー。ケンタ様ー。後で報酬よろしくー』
ミナヅキの言葉に健太は笑いながら約束する。そして一つ目の鍋で水を大量に沸かすと、そこにチョコレートを入れた小鍋で湯煎を始める。周囲に漂う甘い香りに領民達の期待も否応なく高まっていく。
『ケンタ様ー。物凄く良い匂いがするー。早く食べたいー。報酬の前渡しを希望するのー』
「はっはっは。もうちょっとだけ待ってくれ。それまではこれでも食べてたらいい」
物欲しそうにしているミナヅキに健太は衛生ボーロの小袋を封を開けて手渡す。さっそく一口食べたミナヅキは、口の中で溶ける事に驚き甘さに感動していた。
『ケンタ様ー。これ最高! 美味しいー。みんなに配ってくるー』
「それだったらこれも持って行ったらいい。まだまだあるから安心していいぞ」
『わーい。ケンタ様大好きー』
連なっている小袋をミナヅキに渡すと、身体に巻き付けて嬉しそうに飛んで行った。
「羽に小袋が当たっているが飛べるんだな」
「ミナヅキちゃんは精霊ですからね。羽は飾りみたいなものですよ。ケンタ様。そろそろ湯煎? ですよね? 出来上がってきてるのでは?」
健太とミナヅキの会話を楽しそうに聞いてたエルミが鍋を覗く。綺麗に溶けているのを確認した健太は、牛乳と生クリームを入れ軽くかき混ぜ始めた。
「これが綺麗に混ざれば完成だ。エルミは果物の準備は出来たか?」
「はい。大丈夫ですよ。綺麗にカットしました。みんなも待ちきれないみたいですね」
健太が周囲を見渡すと、最初の食べる権利を得た子供や老人たちが目をキラキラさせて健太を見ているのだった。




