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第75話

「では食事の用意をして参りますので」


「ああ。じゃあ、俺はコーヒーを淹れておくよ。面白いのも手に入れたからな。楽しみにしておいてくれ」


「それは楽しみですね。父も呼んで参ります。なにかあれば執事に声を掛けてください」


 エルミが直章(なおあき)からもらった袋を抱えて食堂から出て行く。健太はその後ろ姿を見送くると、アイテムボックスからコーヒーメーカーを取り出してセッティングを始める。


「さて。実験だな。こっちでもバッテリーは動くのか? 静音タイプにしたから音は大丈夫だろうが、出力はどうかな?」


 ネットの評価だけで購入し、充電完了後は自宅では確認したが異世界での稼働確認は初めてのため、緊張しながらコーヒーメーカーのコンセントをバッテリーに挿して電源を入れる。


「おお。ちゃんと動いた。転移して異世界に来てもバッテリーが使えると分かったのは大きいな。これでソーラーパネルも用意出来そうだな。分かった所で……」


 健太は満足そうに頷きながらコーヒーメーカーに豆を投入しスイッチを押す。ミル内蔵タイプのため、しばらく豆が砕ける音を聞きながらコーヒーカップやソーサー、お菓子などを取り出す。


「水も今回は大量に汲んできたからな。後は……。そうだ、塩を納品したいのですが?」


「かしこまりました。では、こちらでお預かりします」


 執事の男性がアイテムボックスから取り出された塩を台車ごと受け取る。一つずつ運ばなくてもまとめて運べる台車に感心しながら個数を数えていた。


「そうだ。その台車は差し上げます」


「えっ? この素晴らしい道具をですか?」


 健太からすれば安い物だが、執事からすれば、初めて見る魔道具に近い物であり、高級品にしか見えなかった。


「それにしても……」


「気にしなくていいですよ。俺の国では安いですから」


「ありがとうございます。では、使用人達の買い物で使わせて頂きます」


 健太の言葉に執事の男性は嬉しそうに頬笑んでいた。


 ◇□◇□◇□


「お待たせしましたな。書類がたまっておりまして。ケンタ殿の活躍で塩問題が解消し、マリアンナ殿の所からも塩が輸入出来るようになりました。それにコーヒーだけでなく嗜好品も持ってきて頂けるようで、本当に助かります」


「いや。それほどではないですよ。あっ。塩についてはアイテムボックスの容量が増えたので、いつもよりも多く持ってきました。価格はいつも同じで大丈夫です。マリアンナ殿から輸入出来るなら、そろそろ取引量を減らした方が良いですか?」


 ステンカが食堂にやってきた。そして、健太の力で領地の問題が解消し、さらに発展に向かっている事を告げる。手放しに褒められる事に気をよくした健太は塩の値引きを始めようとする。


「いえいえ。それには及びません。元々、ブィチコフ領の次期当主予定のゲオルギー殿が無茶苦茶な税を塩に掛けた事が発端です。まあ、いまは取引停止をされておりますがね」


「えっ? それって大丈夫なので?」


 軽い感じでステンカが伝えてくる内容に健太が驚きの声を上げる。領地問題としては悪化しているようにしか思えないのだが、ステンカの表情には余裕があった。


「ええ。全く問題ありません。ケンタ殿から融通して貰っている塩は素晴らしいですからね。実は白い塩は珍しく。別の領地で高値で売れるのですよ。なので、頂いた分の半分を売って、その金額で普通の塩を買っていたのです。さすがに全部売ってしまっては領民の暮らしが立ち行かないので出来ませんでしたが」


「そんな事が? それほどいい塩ではないのですがね」


 ステンカの話しを聞きながら健太が首を傾げた。セルドルフィアの世界では白い塩は貴重品として取り扱われるらしく、前回の取り引きで得た塩は普通の塩に混ぜて領民に配布したとの事だった。


「貴重な白い塩でしたので本当に助かりました。そうブィチコフ領から塩の取引停止を告げられても問題ないくらいに。向こうが慌てていると思いますよ。主要な取引先が無くなったんですから。お陰で別の場所での塩の価格が下がり始めているそうです。うちの分を別の場所に売ろうとしているんでしょうな」


「なるほど。その価格の下がったのを購入していると。まあ、ざまあ見ろと思いますが、そっちの領民は大変でしょうな。おっ。コーヒーが出来上がったようです。エルミが食事の用意をしてくれているそうですので、それまで一緒にコーヒーをどうですか?」


 健太とステンカが領地問題を話していると、コーヒーメーカーから電子音が流れてくる。驚いているステンカの表情に健太は問題ない事を伝えると、砂糖が結晶状態で付いているスティックをソーサーに乗せ提供する。


「これは俺の国でも珍しいです。それと、面白いお菓子もあったので一緒にどうぞ」


「ほう! これは砂糖ですか? まるで水晶のようですな。なるほど。このままコーヒーに入れてかき混ぜればいいと。素晴らしいですね。こんな発想が出てくるとは。それと、このお菓子は? 食べて見ろと? んん! 甘い。いや苦い? こ、これはコーヒーですか?」


「そうです。コーヒーをチョコレートで包んであります。面白いでしょ?」


 ステンカの表情を見ながら健太は嬉しそうにしていた。

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