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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第74話

「なおからもらった袋には何が入っているんだ? 『絶対に! 絶対開けずにエルミちゃんとマリアンナさんに渡してくださいよ! 近々、ミズキさんとミナヅキちゃんの分も用意するっす』この念押しのメールに意味はあるのか?」


 健太は一抱えほどもある布袋を眺めていた。突然、家にやってきた直章(なおあき)が健太に袋を押し付けたかと思うと、袋を開封しないように念を押し、健太に貸していた本を回収すると新たな本を渡して去っていった。


「あいつ。これを渡せと言ったけど海外にいる設定だぞ。普通だったら送料だけで凄いことになるぞ。それにしても『開けるな』と言われるとなー」


 袋の隙間をのぞき込むようにしつつ、好奇心が抑えられずに開けてみると、中から少し小さめの袋と貼り紙があった。


『健さん! 見ちゃダメって言ったでしょうが! なに見てるんっすか!』


「……。えっ? あいつ、どっかで見てるのか?」


 思わず周囲を見渡す健太。直章が居るわけもなく窓まで開けて確認する健太だったが、自分の行動に苦笑しながら呟いた。


「ははっ。居るわけないよな。ちょっと気にしすぎか。おっ! そろそろ時間だな」


 なおからもらった袋を素直にアイテムボックスに収納し、健太は玄関先で靴を履くと召喚に備える。


「そう言えば、異世界で電波時計は同期を取れてないよな? 向こうに行ったら忘れないように時間を確認しないと……。ん! き、きた。くっ!」


 唐突に襲ってくる灰色の景色。相変わらずの浮遊感と回転。そして目の前が真っ白になる。ミナヅキに祝福をもらった事により、以前よりは嘔吐感はマシでありながらも回転による平衡感覚がおかしくなるのは変わらず、健太は歯を食いしばりながら目をつぶった。


 ◇□◇□◇□


「1週間ぶりだな。元気だったか?」


 目の前を覆っていた白い光りが収まり目を開けるとエルミが微笑みながら待っていた。健太の軽い感じの挨拶に、さらに笑みを深めながらエルミは挨拶を返す。


「1週間ぶりです。身体は元気ですが、ケンタ様にお会い出来なかったので寂しかったです。すぐに食事の準備を始めますのでお待ち下さいね」


「い、いや。時間的にご飯は食べて来てるからな。さっそく塩を納品しようか。ん? ひょっとして準備してくれていたのか?」


 健太の回答に今度は落胆した表情を浮かべるエルミ。慌てた健太がわざとらしい声で話し出す。


「そ、そう言えば朝食は軽くだったな。まだ食べられそうだから、用意してもらって良いか? 前のリンゴもあるのか?」


「はい! リイインゴウも狩ってますよ! 最高級の紫を並べてますよ。ウードンも一緒に狩ってきました。今回は少しレベルが低かったので、前回のような高級品にはなりませんが……」


 申し訳なさそうに身体を縮めているエルミに、健太は微笑ましそうに眺めるとエルミの頭を撫でつつ用意していた物を取り出す。


「向こうでエルミのために買ったんだ。受け取って貰えるかな?」


「えっ? 私のために?」


 健太はプレゼント用に包装されている箱を手渡す。突然のプレゼントにエルミは一瞬硬直したが、慌てて開封をする。エルミ達の世界では渡されたプレゼントを少しでも早く開けることが感謝を伝える手段となっていたからである。


「こ、これって化粧品ですか?」


「ああ。ちょっと俺では分からなかったから、なおと一緒に買いに行ったんだけどな。店員さんが勘違いして大変だったよ」


 苦笑して買った時の苦労話をしている健太の話を聞いていたエルミだったが、話しよりも目の前にある化粧品に釘付けになっていた。箱は2段になっており、1段目には口紅やファンデーションが、2段目には化粧水や美容液に乳液が入っていた。


「これがケンタ様の世界の化粧品。こんなに綺麗な容器に入っているんですね。それで、この口紅? ですよね? ケンタ様は使い方をご存じですか?」


「さすがに口紅の使い方は分かるぞ。ここを回すとだな……」


 健太が使い方を教える。ネットで取り寄せた基礎化粧品からメーキャップ化粧品の使い方が書かれている本を手渡す。写真がふんだんに使われている内容で、エルミは嬉しそうにしながら読み始める。


「読めるのか?」


「いえ。ケンタ様の時代である言葉は500年前とは随分と違うので読めませんが、精巧な絵……写真ですよね? それがあるので大丈夫です。それと、この本を教科書として少しでも早くケンタ様の国の言葉も覚えたいですね。ケンタ様が持ってきて下さる道具を普及させるお手伝いをしたいです」


 化粧品の写真を眺めながら答えるエルミの言葉に、恥ずかしそうにしながら健太は頷くと思い出したかのようにアイテムボックスから布袋を取り出した。


「そうだ。なおからプレゼントをもらったから渡しておくよ。どうしても俺が見たら駄目らしくてな。後でユックリと見て欲しい」


「なお様から? 分かりました。後の楽しみにしておきます。では、ケンタ様。食堂まで案内させて頂きますね」


 エルミは嬉しそうに布袋を受け取りながら、健太を食堂に案内した。

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