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第72話

「取りあえずワンコインショップにやって来たわけだが……」


 健太は直章(なおあき)と飲み明かした翌日、仕事帰りに近所のワンコインショップに足を運んでいた。今まで利用した事のない店に、若干緊張しながら足を踏み入れる。


「おお。もの凄い商品が並んでいるな。なおが言っていたボールペンを買うか」


 直章から試用として購入するならワンコインショップが良いと勧められたので来てみたが、その商品数の多さに迷子になっていた。


「ボールペンはどこだよ……。普通にWebショップで買った方が早かったんじゃないか? ん? これは?」


 健太は商品棚に置かれている小瓶を手に取る。十数種類が並んでおり、ラベルにはローズマリーと書かれていた。おもむろにスマホを取り出した健太は電話を掛ける。


『はいー。健さんの従順な部下の直章っすよー』


「なお。ちょっといいか?」


『なんすか?』


 健太は手に持っている小瓶を読み上げる。


「アロマオイルは異世界ではどうだ?」


『おお! いいところを突いてきますね! さすが健さん。アロマオイルはバッチリですよ! 異世界では香油を取るのが大変な作品もあります! 物凄く言い作品なんですよねー。主人公の女の子が可愛くて、周りを固めている王子様や――』


「ありがとうな。全部買ってみるわ。じゃあな」


『ちょ! 健さん! 話しの――』


 直章の話しが長くなりそうだったので、健太は通話を強制終了させるとカバンの中にスマホを収納する。そして、近くにあった買い物カゴを手に持つと次々とアロマオイルをカゴに入れ始めた。


「他にも色々あるな。紙コップとかもいいんな。ストローも大量に入っているな。これも入れておこう。おっ! 珈琲ドリッパーもワンコインで売っているのか。これも大量に買ってしまおう」


 二つ目のカゴに珈琲ドリッパーを大量に入れていく健太。それを見た店員が近付いてくる。


「お客様。よろしければレジでお預かりしておきましょうか?」


「は、はい。ありがとうございます。近々、有志をあつめてコーヒー講座を開こうと思ってましてね。その時に利用するボールペンと紙も探しているのですが……」


 健太の言葉に店員はコーナーに案内すると、2つのカゴを持ってレジに向かった。


「結構有名なメーカーの商品が置いてあるんだな。それも大量にあるぞ。片っ端から買っていくか」


 健太は並んでいるボールペンを片っ端からカゴに入れていく。一緒に鉛筆や油性ペンも入れていると、遠くから小さな声が聞こえてきた。


「あの人はパン男爵じゃ? 大量購入するのはパンだけじゃないのね。なんの商売をされてるのかしら? ワンコインショップ子爵じゃ語呂が悪い――! そうだわ。ワンコ子爵! いいね。これでいこう」


(おい。なに勝手にあだ名を付けてるんだよ!)


 さすがに赤の他人にツッコめない健太は、心の中で叫ぶとカゴを持ってレジに向かう。レジで待っていた店員は健太からカゴを受け取ると、手慣れた様子で次々とバーコードを読み込んでいった。


「合計で230点になりますので24,840円になります。箱に入れますね。袋も何枚か入れときますね。大きな袋も商品としてありますのでお勧めですよ」


「ああ。ありがとうございます。ちょっと置いといてください。袋を探してきます。えっ? はい。ありがとう」


 袋が置かれている位置を店員から聞いた健太は、購入した商品が入る分だけの袋を買うと、その場で詰め込んだ。


 ◇□◇□◇□


「よし。誰も見てないな。『納めよ』」


 健太はアイテムボックスに収納し、手軽になった事にホッとした表情になると休憩するために喫茶店に入る。最近、近所に出来た喫茶店は落ち着いた雰囲気を醸し出しており健太に常連となっていた。


「いらっしゃいませー。ああ。健太さん。いつもので?」


「ああ。いつもので」


 健太の反応に店主は焙煎された豆をミルに入れると挽き始める。新たに芳醇な香りが店に満たされていく。待っている間、健太はステータス画面を表示させて内容を確認していた。


(気付けばアイテムボックスのレベルが3になっていたな。なにが変わったんだ? 赤枠は増えていない。容量が増えているか? それにしてもアイテムボックスも大量になって見にくくなったな。フォルダ構造にようになれば見やすいんだが……)


 健太は電子タバコを取り出して吸いながら物思いにふけていく。


「どうぞ。どうかしたの? もの凄く難しい顔をしてる」


「ああ。いや。ちょっとした考え事だよ。えっ?」


 突然、目の前に現れたコーヒーに驚いていると、店主が心配そうな顔をしていた。慌てて問題ない事を伝えた健太だったが、開きっぱなしになっていたアイテムボックスの画面がフォルダ構造に変わった事に驚きの声を上げる。


「ど、どうかした?」


「い、いや。大丈夫だ。ちょっと知り合いからのメール内容にビックリしてね」


 適当に誤魔化している健太に、店主は首を傾げながらも深くは確認せずに愛想笑いを浮かべながら離れていく。


「おお。これは見やすいな。これがレベル3になった効果か?」


 今までとは違って断然見やすくなったアイテムボックスに健太は満足げに頷くのだった。

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