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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第71話

「いいか。飲み過ぎ注意だぞ? あの二日酔い解消ドリンクは渡さないからな」


「分かってますって! いくら健さんがハーレムチートな主人公だったとしても協力しますよ。あっ! お姉さんー。生ビール二つー」


 ビールとつまみを注文すると、直章(なおあき)は紙とボールペンを取り出す。健太が首を傾げていると本を数冊取り出した。


「さすがに現物を飲食店に持ってくるわけにはいきませんからね」


「なんだ? スイーツ一覧?」


 直章から渡された本を受け取りながらタイトルを確認する。そこには【女子が喜ぶスイーツ百選】と書かれていた。残りの本も順次見ていくと、【タティングレース入門】や【UVレジンで作れる素敵アクセサリー】とのタイトルが見えた。


「これっすよ! いま作家先生達で流行ってるっす。女性作家さんが作ったのをサイトのアップしてたりするんすよ! むしろ売って欲しいですよね! あの先生が作ったかと思うと作品読む時にテンション上がりますよ。これって異世界でいけると思いません?」


「いや。異世界もデザインは凄いんじゃないのか? マリアンナ殿の鎧とか、エルミの服装とか良いデザインをしているぞ? 前見た時も――」


「えっ? 健さんって直接会ったことあるんすか? 最近海外に行きましたっけ?」


 直章が牛タンの唐揚げを食べながら何気ない口調です尋ねる。酔っているのか記憶が曖昧になっている様子に健太は安堵すると、追加で注文するために店員を呼ぶ。


「こっちにビール追加と俺には日本酒で。それと牛タンの3種盛りと、牛タンスープを2人前。あと、特選牛タンステーキも追加で」


「おお! どうしたんです? ボーナスはまだですよ? 臨時収入ですか?」


「ああ。そうだ。あぶく銭だから気にせずに飲み食いしてくれて良いぞ」


 話しを誤魔化すために大量注文した健太の発言に、満面の笑みを浮かべた直章が嬉しそうに手を上げると店員に話し掛ける。


「お姉さんー。今日は俺の上司の健さんが全額奢ってくれるんっすよ! 一番高いのを2人前頼むっす! あと、ビールはキャンセルで一番高い焼酎ロックで!」


「おまえ。まあ、いいや。それでお願いします。じゃあボールペンと紙の説明を聞こうか?」


 自分の支払いがないと分かった直章は普段食べられない価格帯の牛タンを注文する。店員が笑いながら健太を見てきので、苦笑しながら頷いて了承すると直章に説明をするように伝えた。


「いいですか? これは異世界と日本を行ったり来たりするパターンですが、向こうの世界では紙が高級品と言われる設定が多いです。それとペンもインク壺に刺して使うタイプだったりするっす。なのでボールペンなんて持って行ったら大喜び、仰天愕然万々歳って感じですよ。大量に仕入れば金貨がガッポガッポっす!」


「向こうの魔石をこっちで売るのはどう思う?」


「無理じゃないっすかね? だってこっちでは鑑定出来ない石ですし、ひょっとしたら綺麗なビー玉と言われるか、未知の物質として国家機関に目を付けられるかっすね。まあ、国家機関は嘘ですけどね」


「そ、そうか。やっぱり金稼ぎするなら金貨かな?」


「そうですよ! こっちの世界で売ればいいんですよ。異世界の金貨が減る? そんな経済が破綻するほど恐ろしい量を個人が売りさばけませんよ! 第一、そんなに利益を上げていたら税金を取る部署に目を付けられますよ。ねえ。健さん」


 同意を求められた健太は心の中で汗をかきながらも表面上は笑いながら頷く。


(おいおい。金貨をすでに売って100万くらいの利益が出てるぞ? 大丈夫なのか? 金額が落ちても良いから別の場所で捌くか? どっちにしろしばらくは大人しくして売らないようにしよう)


「よし。今日は割り勘だ」


「なんでですか! めっちゃ情報提供してますよね? どこに奢りから割り勘になる要素がありました? やーでーすー。今日は健さんの奢りで美味い牛タンを吐くまで食べるんですー」


「いや。吐くまで食べるなよ」


 呆れた表情になりながら、奢ることは確約すると引き続き異世界で商売になる種を聞きだした。


 ◇□◇□◇□


「お会計は58000円になります」


「お、おう。念のために領収書下さい」


 店員から支払額を聞いて、思わず健太が引き気味に答える。現金で支払いを終わらせると、幸せそうに酔っ払っている直章を半分担ぎながら店を出るとタクシーを止めて、空いたドアに放り込む。


「にゃ! なにしゅんすっか! あれ? ここどこ?」


「タクシーの中だよ。運転手さん。こいつを自宅まで連れて行って下さい。お釣りは要りません。住所は――」


 運転手に住所を告げて1万円を手渡す。場所的に数千円で到着する場所だったので、運転手は上機嫌で頷くと走らせ始めた。遠ざかっていくタクシーを眺めながら、健太は最寄り駅に向かって歩き始める。


 クリスマスも近いのか、シンボルマークとなっているタワーは緑とオレンジのツートンカラーになっており、交差点や見晴らしの良い場所には恋人達が寄り添うように集まっていた。


「この景色もエルミに見せてやりたいな」


 綺麗に取れないと思いながらも、健太はスマホを取り出すと写真に収めて帰路についた。

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