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第7話

1日2話更新がキツくなってきました。

いけそうなら、今日の20時にも更新するつもりです。

「な、な、何で?」


「みゅ? ふあぁぁぁ。おはようございます。ケンタ様。昨日はよく寝れましたでしょうか? すぐに食事の準備を始めますね」


 呆然とした表情で呟いている健太をよそに、エルミは大きく伸びをしながら挨拶をする。薄手の胸元が大きく開いたTシャツで、ベッドから転がり落ちた健太に挨拶をするため、前傾姿勢になったエルミの胸元が大きくはだける。


「あ、ああ。おはよう。ちなみに昨日は部屋の前で別れたと思うのだが?」


「はい。我慢できなくてやってきました。ですが、ケンタ様はぐっすりお休みでしたので添い寝させてもらった次第です。ご迷惑でしたか……?」


 目線がどうしてもエルミの目と合わない健太は、意識を総動員して立ち上がると無理矢理視線を桃源郷から外す。


「迷惑ではない。ちょっと驚いただけだ」


「そうですか? では、ニワトットリーの時間になりましたら呼びにきますね」


 慌てたように答えた健太は自分自信に驚いてた。普段なら絶対に言わない台詞だったからである。自分の台詞に混乱している健太を不思議そうな表情で見ていたエルミだったが、優しく笑うとベッドから降りて朝食の準備をするために食堂に向かった。


「それにしても驚いた。久し振りに人肌を感じたな」


 苦笑しながらスマホの時間を確認すると、7時を10分ほど過ぎていた。雨戸を開けて外を開けると、澄み切った空気が部屋の中に入ってきた。20分ほどベッドでストレッチをするなどして大きく息を吸い込みながら意識をはっきりさせ、窓の外を見ると激しい音と共に踊っているような人影を見かける。


「ん? あれはエルミ――なのか?」


 踊っているように見えた人影は、何かと戦っているようだった。思わず声を上げそうになったが、異様な光景に思わず身体が硬直する。


「な、なんだ? 木と戦ってるのか?」


 うねうねと動いているように見えるリンゴの木とエルミが戦っているのが見えた。リンゴの木はエルミの倍ほどの身長があり、枝を縦横無尽に振り回して攻撃をしているようだった。そんな攻撃をエルミは軽やかなステップを踏んで避けており、タイミングを見て剣を振るおうとしているように見えた。


「あっ! 危ない!」


 エルミが何かにつまずいたように見え、思わず健太が叫ぶ。だがそれは杞憂だったようで、体勢を低くした状態でリンゴの木からの攻撃を(かわ)したエルミはすくい上げるように剣を振るった。


「ぎゅぁぁぁぁ!」


 リンゴの木が悲鳴を上げる。


「全く理解が出来ない……」


 エルミが戦っているのも、木が悲鳴を上げるのも視界や耳に入ってくるが異質すぎて、思考が追いついてないと感じていた健太だったがエルミの声で我に返る。


「ケンタ様ー! ケンタ様が美味しいと言ってくださいましたから、リイインゴウの木を狩りましたよー」


 遠くでもこちらの事は見えていたようで、満面の笑みで走り寄ってきながら手元のリンゴを健太に見せてきた。戦闘中の表情とは打って変わって16才の少女らしい表情を浮かべており、その手には紫色の丸い物体が握られていた。


「昨日、食べさせて貰った果物かな?」


「そうです! 今日はケンタ様の視線を感じましたから、ちょっと頑張ってみました! 食後のデザートで出しますね」


「ああ。物凄く楽しみにしているよ」


 満面の笑みで尻尾を振ってみえるエルミに、健太は手を振り返すのだった。


 ◇□◇□◇□


「お目覚めはいかがですか? ケンタ様」


「おはようございます。ステンカさん。私の事は『さん』付けで呼んで頂けると嬉しいです」


 食堂にやって来た健太に挨拶をしながら紅茶を飲んでいるステンカ。昨日の席に着きながら健太は話し掛ける。


「昨日は飲み過ぎだったのでは?」


「はっはっは。最近、ツラい事が多かったので、素晴らしい出来事にテンション高くなってしまいました。やはり、我が家の至宝であるエルミは最高ですな」


「まだ酔ってます?」


 朗らかな笑顔で答えるステンカに思わずツッコむ健太。その様子を笑いながら受け入れつつ、紅茶を注いで健太に手渡す。


「どうぞ。ケンタさん。エルミほどではありませんが、私も紅茶を嗜んでおります」


「ありがとうございます。昨日、エルミさんに紅茶を淹れて貰ってから紅茶もいいと思えるようになりました。今まではコーヒー派でしたからね」


 芳醇な香りを漂わせている紅茶を堪能しながら健太が答えると、ステンカが思わず羨ましそうな顔になる。


「いいですな。コーヒーを飲むのは貴族最高の贅沢です。ひょっとして、ミルクなどを混ぜるのですかな?」


「私の場合は豆乳を入れますね。少しだけ健康に気を使っているのですよ」


「それは羨ましい限りですな」


 二人して会話をお楽しみつつ紅茶を飲んでいると食堂の扉が開き、ワゴンを押したエルミが入って来た。


「お待たせしました。ケンタ様! 食事にしましょう。今日はリイインゴウはレベルが高かったのか、狩り取るのに時間が掛かりました。でも、その分は甘みになってます!」


「ああ。リンゴだよね? さっきの紫色のやつだよね?」


「はい! 紫色は最高級の証です! その次が赤色です」


 皿に並べられているのは、どこから見てもリンゴに見えた。だが、先ほどの戦闘シーンを覚えている健太からすると、目の前にあるリンゴが昨日食べた物と同じには見えないのだった。

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