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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第68話

「おはよう」


「おはようございます! あれ? 健さん。ちょっとお疲れ気味っすか?」


 直章(なおあき)に確認された健太は椅子に座りつつ、大きく伸びをすると頷く。


「ああ。ちょっと頑張ってたら遅くなってな」


「エルミちゃんか! エルミちゃん絡みっすね。最近の健さんが頑張るって言えばエルミちゃんの為しかないですからねー」


「俺が頑張るのはそれだけじゃねえよ! まあ、今回は関係あるけどな」


 健太はエルミの為に領地改革で必要な情報をネットで調べていた。気付けば深夜になっており、寝坊して朝ご飯を食べる暇もなく、さすがに疲れた表情をしていた。


「ちょっと調べ事をしてたら、寝るのが遅くなっただけだよ。それと朝飯を食えなかったのはツラい」


「なにを調べてたんです? エルミちゃんの創作活動に必要な情報っすか?」


 エルミが小説を書くために資料集めやコスプレをしていると信じている直章が聞いてくる。ライトノベル愛好家である直章ならなにか知っているかと思い、就業までには少し時間がある事を確認して健太が問いかける。


「なあ。例えば中世レベルの貴族が領地改革するならなにが必要だと思う?」


「おお。健さんからそんな質問が来るなんて! 俺もう感激で涙が出て感涙レベルっすよ!」


「おい。同じ事を2回言うな」


「相変わらず健さんは堅いっすね。ライトノベルならこれくらいの言い回しはありますよ!」


「お、おう。それはスマン」


 自信たっぷりと言い放った直章に、健太はそんなものかと思うと軽く謝罪して話を続けるように促す。


「ああ。領地改革っすよね。俺が異世界に行ったら農地改革をしますね。ノーフォーク農法を使って生産性の増大ですよ! オオムギ、クローバー、コムギ、カブのローテーションです。これで家畜が殖える農地倍増っす!」


「おお! 具体的だな。それでノーフォーク農法をする為に必要な道具はなんだ? どのタイミングでどれを植えるんだ? わざわざクローバー植えるからにはは何かに使うんだよな? カブの種類は? 四種類も回していたら休む暇もないが、その辺りはどうすればいいんだ? 冬の水の確保はどうすればいい? ノーフォーク農法と言っているのに家畜が殖えるとの話になったのはなぜだ? そもそも――」


「だぁぁぁぁ! なんすか! 質問が具体的すぎますよ! 小説なんだから、その辺りは適当にいきましょうよ。なんすか健さん。警察ですか! なろう警察ですか! そんなの『異世界だから』との回答で良いじゃないっすか! なにが『その農法では生産性が一時的に下がります。領民に餓死が出た場合に主人公は責任が取れますか?』ですか! 異世界だから魔物を狩ればいいじゃないっすか! 主人公は強いんだよ! オークとかバンバン狩ってくるんだよ! どう思います? 健さん!」


「お、おお。なんかスマン。最近、嫌な事でもあったのか?」


 一気に吐き出すように言い放った後、全力で息を切らしている直章に健太が思わず謝罪しつつ尋ねる。そのタイミングで始業合図のチャイムが鳴ったので、話は仕事が終わった後に飲みながらする事となった。


「ん? ひょっとして参考になるんじゃないか? 非常用電源を用意出来れば向こうでも電化製品が使える?」


 いつものように仕事を進めていた健太に一通の招待メールが届く。EXPOと呼ばれる企業がブースを出した大出展イベントがあり防災関係の企業が多く来ているとの内容に、健太は招待状を得るための手続きを始めた。


「開催は2ヶ月後か。それまでに色々と向こうで情報収集しといた方がいいな」


 WebでEXPOの情報を読み込んでいると内線電話が鳴る。仕事中に横道に逸れていたのに気付いた健太が、頭を振って異世界に向いていた意識を仕事に切り替えると電話を取って話し始めた。


 ◇□◇□◇□


「乾杯ー」


「お疲れ。それにしても長い会議だったな」


「そんな事は気にしなくて良いっすよ! あんな意味分からない要望なんてゴミ箱にポイっすよ! ポイ! お姉さんー。ビールお代わりー」


 会社帰りに健太と直章は居酒屋に来ていた。しばらくは会議が全く進まなかった事と、提案について指摘をしてきた利用者の愚痴を言い合っていた。


「ですよねー。なにが『それは前例がありません。なにかあった時に責任は取れますか?』だよ! 対案を出せって言ったら『それは、そっちが出すべきでしょ? 給料貰ってますよね?』ですよ! なにが『ますよね?』だよ! お前は文句しか言ってないだろー」


「おい。それくらいにしておけ。あんな奴の対応方法なんて何種類もあるんだ。そんなに気にする必要はないぞ。俺に任せておけ」


「さすが健さん! その男前に痺れるー。その大人の包容力でエルミちゃんを口説き落としたんっすね! くそう! あんな可愛い子をゲットするなんて! 新しい写真はないんっすか? ミズキさんでもいいですよ。あっ! お姉さんー。ビールお代わり!」


 もの凄い勢いでビールを飲んでいく直章を見ながら、今日はノーフォーク農法についての話しは出来ないと感じ、健太もビールを追加で注文をするのだった。

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