表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/112

第65話

「では気を付けてお戻り下さいね」


「ああ。分かっている。特に問題がないようだから、次に呼ばれるのは1週間後か?」


 エルミの言葉に健太が頷きながら確認する。そして魔法陣の上に立っている健太をゲンナディーやミナヅキ、ステンカが見送りに来ていた。


「ケンタ様! 次に来る時は缶詰ってのを頼みます! 魚で! 魚が食べてみたいっす! 他にも美味しそうなのがあれば頼むっす!」


『私もー。お菓子が欲しいー。ケンタ様ー。色々持ってきてねー』


「ケンタ様。今回の件については本当に感謝の言葉しかありません。我が領の窮地だけでなく、ダヴィデンコ領も救って頂けました。それで私はカップ焼きそばでお願いします」


 それぞれからの言葉に健太は苦笑を浮かべる。そんな一同の言葉にエルミが怒りの声を上げた。


「ちょっと! これからケンタ様を送還する呪文を唱えるから邪魔しないで! 駄目。昨日のカップラーメンや焼きそばの匂いを思い出すだけで――。じゅる」


 エルミが昨日の夕食に出た料理を思い出してヨダレが出そうになる。慌てて袖口でぬぐっているエルミの姿に健太は思わず笑い出す。


「ははは。エルミもやせ我慢しなくていいぞ。欲しい物があれば言えばいい。あまり高級品じゃなければ構わないぞ」


「い、いえ。そんな、私なんかの為に用意していただけなくても……」


 徐々に小さくなるエルミの声に健太は笑いながら答える。


「ほら。気にするな。宝石なんかの装飾品だと考えるが、それ以外だったらなんでもいいぞ」


 マリアンナとステンカからもらった大量の金貨をイメージしながら健太が話していると、エルミが恐る恐るな感じで伝えてくる。


「では、私は昨日食べたスープと化粧道具が欲しいです。いえ! やっぱりいいです! 無理なら構いません。女性用の道具を購入してもらうのは――」


「ああ。分かった。どんな物がいいかちょっと分からないが、会社の後輩に聞いて買ってくるよ。口紅とかでいいんだよな?」


 軽い感じで答えた健太の言葉にエルミの表情が一瞬強ばる。そんなエルミの様子を見て首を傾げている健太にゲンナディーが話しかけてきた。


「そのカイシャってのはケンタ様が働いている場所の事っすよね? それと後輩の人は女の子ですか?」


「ん? ああ。そうだ。会社は俺が働いている場所だ。それと後輩は男だが、女性にプレゼントする事が多い奴だからな。エルミには言った事があるんじゃなかったか? なおの事を」


「あっ。あのケンタ様と一緒に働かれている方ですね」


 健太から聞いていた直章(なおあき)の事を思い出し、とたんに機嫌良くしているエルミの現金さに健太以外の者が苦笑していた。


『エルミって、本当にケンタ様の事が好きだよねー』


「なっ!」


『私もお菓子くれるケンタ様好きー』


「そ、そうですよね! 私もケンタ様が用意してくれるお菓子が大好きですよ。ふふふふ」


 ミナヅキの言葉に一瞬で顔が赤色に染まったエルミだったが話の内容を理解すると、ぎこちない笑顔を浮かべながら一緒に笑い出した。しばらくミナヅキとお菓子の話しで盛り上がったが、ステンカから咳払いが聞こえると慌てて話しを終わらせる。


「で、では、送還の呪文を唱えますね。皆さんは魔方陣からもっと離れてください。いきます。『この世に現れし勇敢なる者を時の流れに戻す。次なる邂逅(かいこう)を喜びをもって待ち続ける』」


「じゃあな。次は1週間後だぞ。忘れないように召喚してくれ」


 久しぶりの浮遊感と気持ち悪さを思い出しながら、健太は呼吸を整えつつ一同を見渡して召喚のタイミングを伝える。


「はい。では1週間後にお呼びしますね。 腕時計もあるので安心して下さい。1週間で私達は街道整備を中心にしておきます。ケンタ様が次に馬車で移動されるときはマシになっていますよ!」

「ケンタ様! お土産よろしくっすー」

「お身体に気を付けて」

『「我、ミナヅキの名において、勇敢なる者に加護を与えん」ケンタ様ー。ちょっと楽になったー?』


 エルミとゲンナディーの挨拶を聞きながら、嘔吐感と戦っている健太にミナヅキが詠唱を始める。そしてミナヅキの右手から光の粒子が撃ち出され健太を包み込んだ。


「お? おお! 確かに! 気持ち悪さが少し消えた。助かるよ。サンキューなミナヅキ! お礼にホールケーキを買ってきてやる!」


『わーい。ホールケーキがなにか分からないけどケンタ様大好きー』


 徐々に薄れていくミナヅキやエルミ達を落ち着いた気持ちで眺めつつ、健太はそのままユックリと目を閉じた。


 ◇□◇□◇□


「こっちに着いたのか? 俺の部屋だな。『現れよ!』よし、これで表示が出るよな。『再開まであと30秒』出てるな。これは放置して大丈夫だが……。『異世界との同期率30%』? なんだこれ? 前は『異世界に向かいますか?』だったよな? あれ? 今回は時間が流れていないのか? 出発時間と同じ時間だな」


 健太はスマホの時計を見て不思議そうにする。そして考えながら電子タバコを取り出して吸い始めると、ステータス画面に30秒から始まったカウントダウンを眺めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ