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第62話

「えぇぇぇ! ゲンナディーが精霊使い!?」

「嘘だろ? あのゲンナディーが?」

「にしても凄いじゃないか! おめでとう!」

「あやつは儂が育てた」


「誰っすか! 今『儂が育てた』とか言ったの! 誰にも精霊使いとして育ててもらってないっすよ!」


 ゲンナディーが精霊使いであるとの説明に集まっていた一同は驚きながらも祝福をしていた。そして町まで移動した健太達と一緒に、畑仕事をしていた領民達も全員付いてくる。そして門をくぐった時点で歓声を上げると町の住民達に次々と伝え始めた。


「俺の時は、これほどの騒動ではなかったと思うぞ?」


「ケンタ様の場合は、私が緩い箝口令をだしていましたから徐々に噂として広まった感じですね。ゲンナディーの場合は、今まさに領民の耳に入りましたから当然の反応だと思いますよ」


 領民に囲まれている手荒い歓迎を受けているゲンナディーを眺めながら、健太とエルミが話していた。


『ふははははー。皆の者! ひれ伏すがよい! 我が名は水の精霊ミナヅキなりー。控えるのだー』


「「「ははー。ミナヅキ様ー」」」


「なにをやってるんだ。ミナヅキは」


 ゲンナディーの頭の上で仁王立ちしながら高笑いをしているミナヅキ。それを拝むように手を合わせている領民達。かなりカオスな状況になっていた。


「旦那! どうか精霊様を迎え入れるお恵みを。あっ! エルミ様とケンタ様でしたか。失礼しました」


 小銭がたくさん入っている帽子を持って一人の男性が近付いてきたが、エルミと健太だと分かると慌てて謝罪して立ち去ろうとした。


「おいおい。ちょっと待てよ。どうかしたのか? なにか恵んだ方がいいんだろ?」


「いえいえ! 我らの風習で精霊使い様が訪れたら領民から寄付を募っておもてなしをするのです。領主のご息女エルミ様や異世界の勇者であるケンタ様から頂く――」


「構いませんよ。そうですね。では私から」


「えっ? こ、こんなに?」


 エルミが帽子に複数の硬貨を入れるのが見えた健太はエルミに問いかける。


「やっぱり、役職が高い者は多めに寄付するのか?」


「そうですね。貴族が稼いでいる分を領民に還元するのが習わしですね。」


「なるほどね。じゃあ俺も貴族ではないが寄付しよう」


 エルミの説明に健太は頷くと男の帽子に金貨5枚を投入する。気楽な感じで感謝の言葉を伝えようとしつつ、視線を帽子に落とした男が腰を抜かさんばかりに仰天した表情になる。


「き、金貨5枚!?」


「あれ? 足りなかったか?」


 健太からすると今回の報酬は金貨100枚を超える勢いでもらっているので、多少の寄付なら特に問題はなかった。金貨の価値があまり分かっていない状態で足りないと感じた健太は、追加でさらに5枚投入する。受け取っている男性が白目を剥きそうになっているのを見たエルミが慌てて止めに入った。


「ケンタ様! 多すぎます! 見てあげて下さい! 気絶しそうになっていますよ!」


 多すぎるとの指摘と、一人暮らしなら半年程度は余裕で暮らせる金額だと言われた健太は、さすがにやりすぎたと感じて謝罪した。


「すまん。それほど大金だとは思ってなかったんだよ。俺の世界には金貨なんてないからな。それにこの数日で大量に稼いだんだから、気にしないで好きに使ってくれ。あっ! 残っても自分の物にするなよ」


「しませんよ! これだけの金額なら物凄い宴会が出来ます! ケンタ様もエルミ様も是非とも参加して下さい! こうしちゃいられねえ! すぐに大宴会の準備を始めないと! では失礼!」


 男性は健太とエルミに感謝を伝えると大声を上げながら走り去っていった。


「おーい! ケンタ様とエルミ様が大金を恵んで下さったぞー! 今日は店を閉めて大宴会だー!」


「おおお!」

「ケンタ様! エルミ様! ケンタ様! エルミ様!」

「ケンタ様素敵ー」

「結婚してー」

「エルミ様は俺とお願いしますー」

「二人が結婚すれば最強だな!」

「違いねえ!」


 周囲から感謝されているのか、からかわれているのか分からない言葉が二人に注ぐ。そんな周囲の様子に健太は苦笑をしていたが、エルミは真っ赤な顔をして俯いていた。


「そ、そんな。結婚なんて。まだ足りないと思うのです。でも、そうですね。結婚式をするなら王都の大聖堂で上げたいですよね。それにドレスは白で、お母様が持っていたネックレスを付けて……。普段は領地で畑を耕して、魔物や食材を狩って、緊急時はケンタ様が領主として……。そして子供は10人くらいは……」


「おーい! エルミ! 帰ってこーい! ブツブツとなにを言っているか聞こえないが、領民達が不思議な者を見る表情になってるぞ!」


「えっ?」


 一人で遙か未来までイメージをしてクネクネとしていたエルミだが、健太の言葉に我に返って周囲を見渡す。基本的には笑顔が含まれた視線が多く、健太の言うように不思議な表情を浮かべている者は居なかった。約半分は小さくガッツポーズを入れながら応援をしており、残りの半分は二人が結婚する事を期待するようなキラキラした目をしているのだった。

この辺りで章としては終わるつもりでしたが、なぜか終わらなかったです。なぜ?

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