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第54話

「ケンタ様。ケンタ様おはようございます。朝食の用意が出来ましたので起きて下さい」


 窓から差し込む光だけでは目が覚めなかった健太をエルミが起こしに来た。よっぽど疲れていたのか呼びかけに反応しない健太に、エルミは頬を突いたり寝顔を思う存分に眺めていた。


「……。ん? あ、ああ。もう朝か?」


「はい。良くお眠りになっていましたね。もうニワトットリーの時間ですよ。私とお姉様で張り切って朝食を狩り取ってきましたので、楽しみにして下さいね」


「ああ。それは楽しみだ……。ん? 刈り取った? 刈り取ったんだよな?」


「はい! ケンタ様の為に狩り取りました!」


 思わず確認した健太にエルミが満面の笑みで答える。相変わらずの微妙な発言の違いに嫌な予感を走らせつつ、健太は起き上がると着替え始める。


「コーヒーは俺が用意しようか?」


「そちらも大丈夫です! ボリスさんがケンタ様からもらったエスプレッソ機器を使って張り切ってますよ」


 エルミの言葉を聞きながら、健太は着替え終わると食堂に向かう。


「お、おはようございます。ケ、ケンタ様。今日はケンタ様の為にエルミちゃんと一緒に朝食を狩ってきました。お口に合うといいのですが」


 健太を食堂で出迎えたマリアンナが顔を赤らめながら挨拶をする。その様子をみて体調を崩しているかと心配した健太が返事をした。


「おはようございます。マリアンナ殿。ちょっと顔が赤いようですが大丈夫ですか?」


「だ、だ、だ、だ、大丈夫です! お気遣いありがとうございます! 今日も一日元気に頑張ります!」


「いや。本当に大丈夫か?」


 どもりまくっているマリアンナを見て、本気で心配になって思わず素に戻る健太にエルミが慌てて会話に割り込んで来た。


「ケンタ様! お姉様は朝の狩りで疲れていると思われます。気にされなくても大丈夫ですよ。では、準備をしますので、ケンタ様は席に座って待っていてください。行きましょう。お姉様」


「そ、そうね。エルミちゃん。ではケンタ様、しばらくお待ち下さい」


 エルミとマリアンナが食堂を出て行くのと入れ替わるようにしてゲンナディーとミナヅキが食堂に入ってきた。


「おはようございます。ケンタ様」

『おはよー。ケンタ様ー。チョコレートが欲しいー。頂戴ー』


 ミナヅキの挨拶に苦笑をしながらアイテムボックスからチョコレートを取り出して袋ごと渡す。


「おはよう。ミナヅキは全部食べないようにしろよ。これからエルミとマリアンナ殿が朝食を用意してくれるからな」


『大丈夫ー。甘い物は別腹ー』


「エルミ様とマリアンナ様が朝食の用意? それはかなり気合いが入っていますね」


 チョコレートの袋を抱えて大喜びをしているミナヅキを見ながら、ゲンナディーが感心したように頷いていた。


「そんなに気合いが入っているのか?」


 健太の意外そうな顔をしつつ質問をすると、ゲンナディーが興奮したように答える。


「ええ。それはもちろん! お二人も食材調達の達人として有名ですよ。いやー。楽しみだなー」


『楽しみだなー』


 チョコレートを食べながらゲンナディーの後に続くミナヅキに苦笑を浮かべた。


 ◇□◇□◇□


「お待たせしました。こちらがお姉様と私とで狩ってきた朝食です!」


「ケンタ様のお口に合うといいのですが」


 ワゴンに朝食を乗せてエルミとマリアンナが食堂に戻ってきた。思わず警戒しながら皿の上に視線を向けた健太だったが、パンとスープにスクランブルエッグのように見えて思わず安堵した表情になった。


「そんなに嬉しそうな顔をして貰えるなんて光栄です!」


「頑張った甲斐があるわね。エルミちゃん」


 嬉しそうな表情で朝食を並べ始める二人に、若干の罪悪感を感じながらも健太は最初にスープに手を付ける事にする。スープをひとすくい口に入れると、芳醇な香りが最初に鼻腔をくすぐった。そして香りに負けない濃厚な味が健太の舌を包み込む。


「そのスープは私が作りました。トメイトゥとエグゥプラントゥのスープです」


「美味い! トマトとなすのスープだな」


 エルミの説明を健太は意識して日本語にして理解しながら食べる。味わう事に集中している様子に嬉しそうにしながらエルミは説明を続ける。


「トメイトゥは早朝に狩り取るのが一番なので頑張りました。狩り取るのが結構大変で、スピードが速い上に、止めを刺すタイミングを間違えると爆破するのです!」


「ば、爆発? トマトが爆発するのか?」


 驚きの声を上げる健太にエルミは胸を張って答える。


「はい! トメイトゥの実を最後に落とすように切り取らないとダメです。そのタイミングはシビアで、一番良いのは一刀両断した瞬間に右手と左手を斬り飛ばす感じです。こんな感じで!」


 実際に討伐した様子を再現するエルミ。健太の目には再現した動きは全く見えなかったが凄い事だけは分かった。


「さ、さすがだな。エルミのお陰で美味しいスープが飲めるよ」


「いえ! ケンタ様の為に頑張りましたからね! エグゥプラントゥは逆に気配を消して、背後から一撃を加えないと爆発するのです!」


 こっちの食材は爆発するのが基本なのかと、思わず健太は真剣に考えた。

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