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第51話

 調理場で唐揚げを追加で作っている健太に、マリアンナが申し訳なさそうな顔で近付いてきた。


「すまない。ケンタ様。こんな事になるとは思ってなく……」


「気にしなくてもいい。まずは、ここにある唐揚げの素を使って作りきってしまおう。ボリスさんには申し訳ないけどな」


 唐揚げの匂いは屋敷の外にも漏れていたようで、外で作業をしていた者が「なにを食べているか?」と確認をしてきた。そして内容を聞いた者の一人が作業をしている者に伝えたため、大混乱が起こっていた。


「おい! それは俺の分だろうが!」

「なんだと!? さっきお前は2個食べただろうが!」

「やんのか!」

「ああ!? 表に出ろ!」


「おい。喧嘩するなら食べるな。そして外で喧嘩しろ」


 唐揚げを巡って殴り合いに発展しそうだった二人を、調理が終わってマリアンナと一緒に戻ってきた健太が呆れた表情で止める。


「「すいませんでした!」」


「唐揚げはこれで終わりだが、別の物を用意したからそっちも食べろ」


 綺麗な謝罪をしている二人に健太は語り掛けながら皿をテーブルに並べ始める。そこには冷凍食品の餃子やシューマイ、炒飯にハンバーグなどが乗っていた。


「「「うぉぉぉぉ!」」」

「なんだこれ! うめえ! こんな味の濃いのを食べたことがねえ!」

「おい! ボリス! 絶対、作り方を覚えてくれよ! 必要な材料は俺たちが必ず用意するからな!」


 猛烈な勢いで消費されていく料理に、少ししか食べられなかった者達がボリスに駆け寄って必死の表情で頼み込む。


「ああ! 任せておけ! 俺が異世界の料理を広めてやる! お前達も協力しろ!」

「「「うぉぉぉ! ボリス! ボリス! ボリス!」」」


 ボリスの力強い宣言に集まっていた兵士達が(とき)の声を上げる。そんな一致団結をしている様子を、若干引いた感じで眺めている健太にエルミが語りかけてきた。


「どうかされましたか?」


「いや。あまりの勢いに押されてな。それにしても、こんなに喜んでもらえるとは思わなかったよ」


 苦笑しながらエルミと話していると、疲れ切った表情のゲンナディーと楽しそうな空気にそわそわとしているミナヅキが食堂に入ってきた。


「なんのお祭りっすか? ……。えっ? そんな美味しい物を食べてたんっすか? ずるいっすよ! こっちは一所懸命解体していたのに! どおりで人が減っていくと思ったら!」


「まあ、そんなに怒るなよ。ゲンナディーの分も残しているからな」


 ゲンナディーが嬉しそうな顔をするのを見て、健太はアイテムボックスに確保していた料理を手渡す。物凄い勢いで食べ始めたゲンナディーの横で、ミナヅキは兵士達に水鉄砲を撃って注意を引くと大きな声で話し始める。


『みんなー。ミナヅキの冒険活劇を聞きたいかー。ケンタ様と鉱山に入ってインナーゴウを倒した話をするぞー』


「ん? せ、精霊様じゃないか!」

「ケンタ様の冒険活劇?」

「なんか面白そうだな」

「おい! 誰かエールとつまみを持ってこい! 飲みながら聞こうぜ!」


 エールや残っている料理をかき集めて兵士達がミナヅキの元に集まってきた。


『うむ。うむ。では語ってやろー。ケンタ様と私ミナヅキとエルミちゃんに、ついでのゲンナディーが鉱山に突入すると――』


「おい。いいのか。ついで扱いにされてるぞ?」


 滔々(とうとう)と語り出したミナヅキを眺めながら、健太がゲンナディーに話しかける。一瞬、視線をミナヅキに向けたゲンナディーだったが、今は食事に興味が向いているようで微塵もツッコむ様子を見せなかった。


「別にいいっすよ。その間に食事が出来ますからね。ところでケンタ様。他にも料理はないんっすか? ちょっと少なすぎて物足りないっす」


「ん? だったらカップラーメンでも足してやろうか?」


 さすがにカップラーメンを食べると匂いと麺をすする音でミナヅキ冒険活劇の邪魔になるとの話になり、ゲンナディーと健太、そしてエルミは調理場に向かう。


「ちょっと借りるぞ。それとすまん! ボリスに渡す唐揚げの素がなくなってしまった。今度、こっちに来るときに大量に用意するから勘弁してほしい」


「ん? 大丈夫だ。味は覚えた。後は作り方をマスターして、自力で作れるようになるだけだ。色々と試行錯誤をするから唐揚げの素は遅れてもいいぞ」


 力強い言葉でボリスが答える。健太はカップラーメンをゲンナディー用に2個作ると、アイテムボックスからエスプレッソ用の機器とコーヒー豆を取り出して準備を始める。


「じゃあ。ボリスさんには特別なコーヒーを淹れてやる。こっちの世界じゃ全くない飲み方だと思うぞ」


「えっ? そんなものを俺に? い、いいのか?」


 世界で始めて飲むとの発言に、恐縮しているボリスとワクワクしているエルミを見ながら、健太は楽しそうにしながら作業を続ける。


「ああ。問題ないぞ。それと器具と粉もプレゼントしてやる。それに普通のコーヒーの淹れ方も教えてやるから、こっちでもコーヒーも広めてくれよ」


 ネットで購入したエスプレッソを作れる器具にコーヒーの粉とお湯をいれると、一気に押し出して作り始めた。

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