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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

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第49話

「おいおい。金貨85枚だと? それはもらい過ぎでは? インナーゴウで苦労をしているとの話でしたが、マリアンナ殿の方には問題ないのですか? 私個人に渡さなくても、エルミの領地に援助をしてもらえればいいですよ」


 エルミの報告を聞いて、金額の多さに健太が若干顔をひきつらせつつ確認すると、尊敬するような顔でマリアンナが答える。


「エルミちゃんの事を考えて、そんな謙虚な事をおっしゃるなんて。さすがはケンタ様ですね。それにしても金貨85枚は多いですか? 正当な報酬だと思っておりますが? それにインナーゴウの卵を全て譲って下さり、カップラーメンや殺虫剤の取引もしていただけます。取りすぎなんて思わずに頂ければ。今回の出来事は我が領地にとっても利益になる――。エルミちゃん! その『えっ? まだ搾り取ってもいいの?』みたいな顔をやめて!」


 マリアンナの悲鳴に屋敷にいた者の笑い声が響き渡る。インナーゴウの解体作業に領兵だけでなく屋敷の人間も派遣されており、ここ場にいるのは健太とエルミにマリアンナ、執事の男性や調理人。それと最低限の警備兵士数名だった。


「お嬢様。それであっしが呼ばれた理由はなんです? 早く皆さんの料理の準備をしたいんですが?」


「あなたにはケンタ様から料理を習って欲しいの」


 突然呼び出された料理人が不機嫌そうな顔で説明を求める。マリアンナが理由を説明すると、話を聞いていた料理人の顔が徐々に険しくなっていった。突然の話に健太も驚いた表情でマリアンナの顔を見る。


「マリアンナ殿? そんな話は聞いてませんが?」


「そこをなんとかお願いします! やっぱり異世界の料理に興味があるじゃないですか! 報酬は別に用意させてもらいますから! あなたも興味があるでしょ? 誰も作った事のない異世界の料理なのよ!」


「確かに。異世界の料理ですか。それは興味が惹かれますな。それでケンタ様は料理が出来るので?」


 マリアンナの説明に料理人の瞳に好奇心が芽生えつつも、健太が料理を出来るのかと疑わしそうな目を向ける。その視線に気付いたエルミが話し始めた。


「やりましょう! ケンタ様! ケンタ様が問題ないのでしたら、これはいい話だと思います。それにケンタ様ならできますよ! カップラーメンもスープも美味しかったですよ」


「おいおい。全部、インスタント食品だぞ。それに俺の料理の腕は素人レベルだぞ? 道具はたくさん用意してきたけどな」


 健太はアイテムボックスから調理道具を次々と取り出す。一同は健太が取り出す包丁や鍋などは見た事はあったが、不思議な形状をした物は使い方のイメージすらできなかった。その中の一つを指さしながら料理人が確認する。


「あ、あの。ケンタ様。この道具の使い方は?」


「ああ。これはフードスライサーと言って、こうやって使うんですよ」


 アイテムボックスから突然大根を取り出してスライスを始める健太。みじん切り、千切り、イチョウ切りをジョイント変えながらテレビでの宣伝のように次々と加工していく。


「な、な、な。こんな簡単に出来る!? ケンタ様! この魔道具は高いのですか?」


「それほどじゃないな。それにこれは魔道具じゃないぞ? そうだな。よく分からんが銀貨1枚くらいじゃないか?」


「そ、そんなに高級品なのか……。い、いや。これだけ簡単にプロのように野菜が切れるなら、弟子の育成に時間が注げる。ある程度の包丁捌きが出来る奴には、これの使い方を教えて、残った時間で別の作業をさせれば……。ケンタ様! お願いだ! それを! それを譲ってくれ! 銀貨1枚はすぐに払えないが、必ず! 必ず返済す――」


 必死の表情を浮かべている料理人に、健太は軽く笑うとフードスライサーを手渡す。


「では、これは先行投資として差し上げよう。次に料理を食べに来る時にもてなしを頼む。それと、使っていく内に刃は劣化していくが、それは交換時には銀貨1枚をもらいますよ。使い方を間違わなければ、すぐに壊れないから安心したらいい」


「え? い、いいのか? そんな条件で? 本当にいいんだな! ありがとうよ! 次にケンタ様が来た時には絶対に美味いモンを食わせてやる!」


「ああ。楽しみにしているよ。マリアンナ殿もそれでいいかな?」


「ええ。それで構わないですよ。貴方はケンタ様に自信を持って料理を振舞えるように頑張って魔道具フードスライサーを使いこなしなさい。それと、最初に戻ってケンタ様が料理を教えてくれれば完璧ですね。あっ。料金は私が支払っておきます」


 マリアンナの言葉に料理人は感謝の言葉を述べていた。そして健太はマリアンナが日本の料理を期待している事に苦笑しながら、自分が覚えている料理を考え始める。


「取りあえず簡単ポトフでも作るか」


 大根を取り出した時と同じように、用意していたアイテムボックスからキャベツにジャガイモ、タマネギやブロッコリーを取り出す。


「この野菜は俺の国で取れる野菜なんだが――」


「えっ? 野菜が小さい?」

「おい。それよりも野菜が原型を留めているのに暴れてないぞ? 活き締めか?」

「それにしてはケンタ様は普通に包丁で切っているぞ。活き締めだったら最後の抵抗で暴れるから、縛り付ける必要があるだろ?」


 軽い感じで野菜を切り出した健太に、集まっていた一同がざわめき始める。最初は気にせずに調理をしていた健太だったが、話の内容が耳に入ってくると徐々に眉をしかめ、最後は思わずツッコんでしまった。


「うぉぉぉい! ちょっ! お前らの国での野菜を見せてみろ!」


「えっ? さすがに今から狩りにいくとなると遅くなりますので、明日の朝食に間に合うように用意させてもらいますね。いいですよね? お姉さま」


 なぜか猛烈にやる気を出しているエルミと、猛烈に乗り気になっているマリアンナの二人がいるのだった。

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