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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

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第48話

「こわい。怖い。コワイ……。エルミちゃんとお金の話するのが怖い」


「ふふっ。そんな事を言わないで下さいよ。マリアンナお姉さま。インナーゴウ1000匹以上を、そのままの姿で確保できたのですから。それに比べたら、卵300個以上を買い取るくらい――」


「その笑顔が怖い! エルミちゃん。情け容赦なしでむしり取ってくるんだもん!」


 プルプルと震えているマリアンナの横で、エルミが素晴らしい笑顔で売買契約書を眺めていた。書類を作成した財務の役人も青い顔をしており、文字の読めない健太が確認する。


「なあ。俺は、こっちの文字は読めないが、どんな契約になっているんだ?」


「ふふふ。大丈夫ですよ。ケンタ様とお姉様が不利益になるような契約にはなっていませんよ。ねえ。お姉様?」


「そうだけど! そうなんだけど! せっかくアレもコレも今回の利益でやろうとしたのにー」


 皮算用を見事に破られたマリアンナの悲鳴に、エルミは満面の笑みを浮かべた。


「では、インナーゴウの卵の支払いは後日として……」


「分かってるわよ。エルミちゃんに救援依頼をした報酬分と、ケンタ様とのカップラーメン、殺虫剤の購入契約の話よね。こちらは勉強してくれると嬉しいわ。いや。本気でお願いしているのよ! そんな笑顔をしないで!」


 エルミの表情を見て、マリアンナが泣きそうな顔になる。しばらくは二人に任せた方がいいと判断した健太は、席を立つとインナーゴウの回収場所に向かった。


「あっ! ケンタ様! もらった煎餅美味かったっす! また頼みたいです。つっ! 冷たっ! ミナヅキちゃん! 冷たいから」


『たーのしー。ケンタ様。ありがとうー』


 インナーゴウの解体をしている場所でゲンナディーとミナヅキと出会う。ゲンナディーは器用にインナーゴウを解体しており、その横でミナヅキが水鉄砲を撃って邪魔をしていた。


「なあこのインナーゴウの使い道はどうなっているんだ?」


「そうですね。これだけ綺麗に討伐しているので、今回の使い道は多いですよ。羽は工芸品に使いますし、手足は頑丈なので武器の素材として使います。それに、頭部にある魔石は魔法を使う時に重宝します」


 解体を続けながら説明をしているゲンナディーにミナヅキも参加してきた。


『魔石は美味しいからねー』


「た、食べるのか?」


『食べるよー。力が(みなぎ)ってくるのー』


 ミナヅキが力こぶを作りながら説明してくる様子に、健太は微笑みながらゲンナディーに目線で確認する。


「精霊様は魔力が主食みたいなものですからね。俺らと一緒にご飯とか食べるけど、ミナヅキちゃんからしたらデザート感覚じゃないっすかね?」


『ケンタ様のご飯美味しいよー?』


 首を傾げながら不思議そうにしているミナヅキに健太とゲンナディーは苦笑を浮かべていた。


「あっ! それから肉も食べますよ」


「やっぱり食べるのか……。虫を食べるのはちょっとな」


「えっ? ケンタ様の国では食べないんすか? は? こんなにデカいインナーゴウが居ない?」


 嫌そうにしている健太の表情を見てゲンナディーが不思議そうな顔をする。


「でも、ウードンは普通に食べてましたよね? インナーゴウと同じじゃないっすか?」


「いやいや! うどんは美味いだろ!」


「インナーゴウも美味いっすよ? まあ、ケンタ様が食べないなら、俺への割り当てが増えるからいいっすけどね」


 普段食べない物なので忌避感が出てしまうとの健太の説明に、不思議そうな顔をしながらも取り分が増えると機嫌良くゲンナディーは解体を続けた。


 ◇□◇□◇□


 1000匹のインナーゴウを解体するには時間が掛かるとのことで、健太達はマリアンナの屋敷に戻ってきていた。


「いい感じで売れましたよ! インナーゴウの卵。それにしても良かったのですか? 少しくらいは残しておいた方が――」


「いいんだよ。あっ。もしエルミが必要だったら、その分は残したらいいぞ。俺からの報酬だと思ってくれ」


 エルミの報告に健太は気にしていないことを伝える。欲しい分は好きにしたらいいとの話に、エルミは苦笑を浮かべながら答えた。


「インナーゴウの卵は銀貨1枚はしますよ。それと、お姉様には卵の殻をある程度譲ってもらう話はしておりますし、領地には中級ポーションが必要になるような魔物は居ませんので必要もありませんので大丈夫です」


「そうか。それだったらいいけどな。ちなみに今回の依頼はインナーゴウの討伐だよな。それのトータル報酬はどうなったんだ?」


 なにげに聞いた健太の質問にエルミが可愛らしく眉を寄せながら答える。


「えっとですね。インナーゴウの卵300個で金貨3枚。討伐した成体1000匹の引き取り価格で金貨10枚。それ以上のインナーゴウは領地に送ってもらいました。受け取った金貨はケンタ様がご自由にお使いください」


「そ、そうか? そんなに貰っていいのか? それにしても今回は儲かった感じだよな? 前に塩の代金として金貨5枚をもらっていたからな金貨13枚なら黒字だ」


 報告を聞きながら健太が頷いていると、エルミは首を振りながら話を続ける。


「ケンタ様? 報告はまだ途中ですよ。先ほどの金額以外にも、インナーゴウを討伐するための援助金として金貨10枚。噴出式殺虫剤の使用代として金貨25枚。バズーカタイプの殺虫剤が金貨25枚。それと今後購入予定のカップラーメンとカップ焼きそば、殺虫剤代金が定期的に入ってくる事になっております」


 合計85枚の金貨が入ってくる上に、今後も定期的に収入があるとの報告に健太は唖然としていた。

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