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第47話

「ケンタ様? そろそろですかね?」


「ああ。2時間も封印してれば鉱山中に殺虫剤が行き渡ってるだろう。念のためにバズーカータイプの殺虫剤も皆に渡しておこうか」


 健太はアイテムボックスから取り出し次々と配付を始める。インナーゴウをそのままの姿で倒せる異世界の武器を手渡された一同は、おっかなびっくりな感じで受け取りながらも、興味津々の表情で眺めていた。


「これが異世界の武器」

「魔法使いの杖って感じでもないよな?」

「これは握る部分だよな? ものすごく握りにくそうだ。使い方がさっぱり分からない。さっきケンタ様は横にして使っていたよな?」


「あー。使い方だが、握る部分をこのように起こす」


 健太の説明を聞きながら、恐る恐るな感じで指示に従う一同。全員が出来たのを確認して健太は説明を続ける。


「こっちから殺虫剤が噴射される。間違っても逆を向けるなよ。そして、このレバーと呼ぶ分を引っ張ると――」


 誰もいない場所に向けてレバーを引く健太。勢いよく噴出される薬剤を見て説明を聞いていた兵士達から歓声が上げる。


「このように勢いよく噴射される。大体、40秒くらいで中に入っている薬剤が無くなるから注意してくれ」


「あ、あの。薬剤が無くなったら、どのように補充をすれば?」


 一番興味を持って触っていた兵士が思い切って挙手し、健太に質問をしてくる。


「ああ。それは使いきりだ。薬剤が無くなったら新しいのを使ってくれ」


「こ、こんなに高級な武器なのに使い捨てなのですか?」


 健太の軽い感じの説明に驚きの表情を浮かべた兵士に、エルミが大きく頷きながら話し始める。


「その通りです。私も初めて聞いたときはびっくりしましたが、ケンタ様の国では武器は近接戦闘用の武器でもない限りは使い捨てが多いとの事です。中には補充できるタイプもあるそうですが、そういった武器はさらに高額になると聞いています」


「えっ? こ、これよりも高額なの……。それを使ったら世界が取れるとか?」


 エルミの説明にマリアンナがバズーカタイプの殺虫剤を眺めつつ驚愕の表情を浮かべる。その横で、健太は大きく頷きながら補足の説明を入れる。


「物によるだろうがな。あっちの世界で最強の武器なら世界は狙えるだろうな。だが俺の権限では、そういった武器の購入は出来ないようになっている。要望されても応えられないからな」


「そ、そうですよね。異世界の勇者であるケンタ様が、世界を征服できるような武器を取り扱われる訳はありませんものね」


 マリアンナは冷や汗を流しながら、健太の答えに安堵のため息を吐いていた。


 ◇□◇□◇□


「説明は終わりだな。では、鉱山の入り口を開けよう。そこはお願いしても?」


「ええ。大丈夫です。魔法兵詠唱準備! 防御兵は入り口が開いた瞬間に魔法兵を守りなさい! 残りの者はバズーカーを構えて発射準備!」


「「「はっ!」」」


 号令を受けて、兵士達が一斉に動き始める。半円状に陣取った後はマリアンナの指示を待つ。


「詠唱開始!」


 マリアンナが上げていた腕を振り下ろして号令を掛ける。魔法兵3名が杖を掲げながら詠唱を始める。同時に発動した土魔法は、入り口を塞いでいた岩を一瞬で溶かすように消し去った。


「おお! 凄いな」


「ケンタ様! 警戒をして下さい! 戦闘中ですよ!」


 他人事のように感心している健太をみたエルミが叱責する。


「す、すまん……」


 命のやり取りをしている事を失念していた健太は平謝りすると、バズーカタイプの殺虫剤を構えて入り口を睨みつけた。


「魔物の反応は入り口付近にはありません!」


「よし! では、偵察兵は警戒しながら進みなさい!」


「「「はっ!」」」


 警戒しながら少し進んだ偵察部隊だったが、すぐに引き返してきた。あまりにも早い帰還に一同が警戒レベルを最大限に引き上げたが、拍子抜けしたような表情の偵察部隊から報告を受けて唖然とする。


「報告します! インナーゴウは全て死んでおりました。エルミ様から報告のあった王族種も完全に沈黙しており、死んでいる事を確認しております。インナーゴウの数は1000匹以上かと!」


「もうすぐ、巣別れするところでしたか。危なかったですね」


 健太が話に付いていけずに困惑していると、エルミが説明をしてくれた。インナーゴウの群は500匹以上を単位としており、それが1000匹を越えると新たに王と女王が誕生して、別の場所に飛び立つとの話だった。


「なるほどな。ミツバチみたいな感じか?」


「ハッチョミーツは、そんな生態をしていませんよ?」


 健太の呟きにエルミが首を傾げながら答えていた。二人の会話は続いていたが、その間もマリアンナは指示をしており、兵士達に突入命令を発した。


「では、作業を二手に分けます。1班は死亡しているインナーゴウを広間に集めなさい。2班は鉱山の探索を。特に卵は貴重です。全て回収するように。それと、何があるかは分かりません。油断はしないように!」


「「「はっ!」」」


 マリアンナの指示に従って兵士達が動き始める。その後、全てのインナーゴウが死んでいる事が確認され、改めて回収をメインとする編成となり兵士達だけではなく領民も集められていた。


「なあ。俺たちが回収した卵はどうなる? 報告した方がいいのか?」


「最後に報告で大丈夫ですよ。こういったのは危険な任務をした者に所有権が認められますから。後はお姉様が卵をどのくらいの金額で購入してくださるかですね」


 健太の問い掛けにエルミは素晴らしい笑顔で答えた。

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