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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

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第45話

「美味い!」

「これが異世界の食べ物? こんな簡単に作れのに美味いのはなぜだ?」

「料金次第ですが、すぐにでも導入を始めた方がいいのでは?」


 健太から支給されたカップラーメンを食べながら、マリアンナの家臣達はざわめいていた。寒さや暑さなどに影響を受けず、軽い上に多少の衝撃では壊れないなど管理面でも優れている。それに異世界の勇者である健太の話では、それほど高くないという。


「ケンタ様! お願いですから大量購入させて下さい! 10個で銀貨1枚では?」


「その辺の交渉はエルミとお願いします。私はこちらの貨幣価値が分かりませんから」


 マリアンナが急ぎ連れてきた文官が、必死の形相で交渉してくる。銀貨1枚の価値が分からない健太は、軽い感じでエルミに交渉を丸投げし、自分はカップ焼きそばを作ると食べ始めた。


「な、なんだ? この暴力的な匂いは?」

「誰だよ! こんな美味そうなのを食べてる奴は!」

「おい。叫ぶなよ。食べてるのはケンタ様だぞ! カップラーメンは匂いをかいで、食べたら絶品だと分かるが……。あ、あれはなんだよ! 匂いだけで(よだれ)が止まらん!」


 周囲に匂いをまき散らしていたようで、単にカップ焼きそばが食べたい気分だった健太は自分のしでかした飯テロに今更ながら気づく。


「お、おう。そんなに気になるのか? だったらカップ焼きそばも大量に持ってきたが試食でも――」


「します! 私がします!」


「俺もっす! 鉱山から出てから俺の事を放置しまくりでしたよね? 酷いっすよ! その償いに俺にも下さい!」


『私も食べたいー』


 健太がアイテムボックスからカップ焼きそばを取り出すと、マリアンナの家臣達よりもエルミとゲンナディーやミナヅキがもの凄い勢いで立候補してきた。


「ぐっ! お三方に言われると譲らざるを得ないですな。なんせ、今回の功労者ですからな!」

「仕方ありませんな!」

「本当に残念ですが! ちょっとくらいは私に恵んでくださってもいいですぞ!」


 心底残念そうにしている家臣達を見て、健太が苦笑しながら追加でカップ焼きそばを取り出して話し始める。


「では、追加しましょう。エルミとゲンナディー以外に3名まで試食を。もしくは出来上がりを皆さんで分けて下さい」


「「「うぉぉぉ!」」」


 健太の言葉に誰がカップ焼きそばを食べるかの争奪戦が始まる。なぜかマリアンナもその輪に混じっており、最終的には争いに敗れて号泣していた。


「うぐぅぅぅぅ。私も食べたかった……。領主なのに! 一番偉いのに! 誰も譲ってくれないの!」


「えっ? いやいや! 購入していただけるならサンプルでお渡ししますよ。家臣さん達がどん引きしてますから! カップラーメンも、カップ焼きそばも種類はたくさんありますから、今度は一覧表をお持ちしましょう。好きなのを選んでくれたら、また持ってきますよ。お金はもらいますが」


 健太がマリアンナに声を掛けつつ話をすると、周囲の空気が研ぎ澄まされたように静寂に包まれる。


「な……なんだと? これの他に色々な種類がある?」

「マリアンナ様が購入を決めれば食べられる?」

「だが、非常食だろう?」

「いえ! 非常食としての購入話はやめます!」


 突然のマリアンナの言葉に悲痛な表情を浮かべた家臣達を静寂が包みこむ。しかし、そんな静寂を破るような声が響きわたった。


「これは非常食ではなく、日頃の働きに対しての褒美の品とします! これが食べたい者は仕事を頑張りなさい!」


「なんだと……」

「仕事を頑張ればカップラーメンが食べられる?」

「あの暴力的な匂いを腹の中に入れられる?」


 徐々にざわめきが大きくなる中、マリアンナは満足げに頷きながら家臣達を見渡すと、先ほどの号泣が嘘のような立ち居振る舞いで話を続ける。


「購入金額次第ですが、家族の分も支給します! 今回は鉱山での後処理を皆がどう働くかで決めます! しっかりと励むように!」


「「「うぉぉぉぉ!」」」

「俺はやるぞ!」

「いや! 俺も負けん!」

「俺だって、かあちゃんに食べさせてやりてえ!」


 マリアンナの言葉を受けて、家臣達が絶叫に近い声を上げる。あまりのテンションの高さに顔をひきつらせながら、健太はエルミに小声で尋ねた。


「なあ。このカップラーメンはどのくらいで売れるんだ?」


「そうですね。先ほどの10個で銀貨1枚では話になりません。価値が分かっておりません。これは容器も含めての価値になると思います。ちなみにケンタ様はおいくらで購入をされましたか?」


「あー。安売りで買ったからなー。金額を伝えても分からないよな。前にエルミが食べた食パンがあるだろ? あれと同じくらいだ」


 前に食べさせてもらった極上のパンと同じ値段と聞いて、エルミが大きく息をのむ。


「な、なるほど。保存性と運搬性を考えたら妥当な価値ですね。分かりました。マリアンナ様と交渉してきます」


 エルミは金額の価値を確認すると、カップラーメンと連呼している集団と一緒にいるマリアンナの元に向かって交渉を始めた。


「お姉さま。カップラーメンの購入のお話しが……」


「価格交渉よね? 出来ればお手柔らかにしてもらえると助かるわ」


 少しでも安く済ませたいマリアンナだったが、購入したいとの気持ちはバレバレであった。その為、主導権はエルミが握っており、マリアンナにとっては分の悪い交渉が始まった。

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