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第43話

「えっ? まさかブウドウのジュースですか? Cランク魔物ですよね? それをこんなにたくさんジュースにするなんて……。ケンタ様の国って凄いっすね!」


「Cランク魔物? いや。普通に葡萄の木から実を採ってジュースにしただけだぞ?」


 ゲンナディーが驚きの表情を浮かべながらペットボトルの葡萄ジュースを飲む。ミナヅキも小さなコップに注がれたのを飲み干して、満面の笑みを浮かべていた。


『美味しいー。ケンタ様ー。これっていっぱい用意できるの?』


「ああ。葡萄だけでなくて、他にも色々と用意ができるぞ」


『そうなのー? だったら、ミズキ様にリイインゴウのジュースを持ってきてー』


 ミナヅキと健太の会話を、ブウドウだと思い込んでいるエルミが驚愕の表情を浮かべていたが、ゲンナディーは商売の気配を感じたのか健太に話しかける。


「ケンタ様。さっきから話しているジュースって、全部この容器に入ってるんすか?」


「ん? 種類は色々あるぞ。もっと大きかったり、缶だったり。紙パックもあるな。缶ならこんな感じだ。中に入っているのはコーヒーだけどな」


 健太はアイテムボックスから缶コーヒーを取り出して軽く投げる。慌てて受け取ろうとしたが、ゲンナディーは焦りのあまり取り落としてしまった。


「ああああ! お、俺! な、なんて事を! ケンタ様! この償いはどうすれば――」


「いやいや。なんで償いなんだよ。缶コーヒー1個で償いなんてしてたら命がいくつあっても足りないぞ。それに、飲み終わったら缶は捨てるんだから気にするな。それと、こうやって開けるんだよ」


「す、捨てる? こんな高級な物を? ふたを開けたら閉められないと? じゃあ、ペットボトルの方が便利なんじゃ? えっ? 昔は缶しかなかったんすか?」


 混乱している上に、健太から使い方を説明されたゲンナディーは、混乱が加速しつつ缶コーヒーを飲むように促されるままに口を付ける。


「甘い! コーヒーの味もする。ケンタ様! 飲み終わったこの缶コーヒーを俺に下さい!」


「えっ? 別にいいぞ。ちなみに、さっきは商売の話をしようとしたのか? だったら、エルミを通してくれ。これからの商売についてはエルミを通さないと一切しない」


「えっ? ケンタ様?」


 葡萄ジュースの美味しさを噛みしめながら別の世界にトリップしていたエルミが驚きの顔で再起動する。


「エルミの受け取る手数料は1割だ。もちろん。俺がこっちで買って、向こうに持って行く場合でも販売価格を1割乗せにしてくれたらいい。それが少しは財源の足しになるだろう」


「ケ、ケンタ様……」


 健太の気遣いに目を潤ませたエルミが抱きつこうとしたタイミングで、ミナヅキが軽い感じで声をかける。


『みんなー。そろそろ卵を回収して行った方がいいと思うー』


「そ、そうでした。ありががとう。ミナヅキちゃん。ケンタ様。最初の質問に戻りますが、ケンタ様のアイテムボックスに収納する事は出来ますか?」


 ミナヅキの言葉に、エルミは頬を染めながら健太に確認する。


「うーん。アイテムボックスには個数と容量があるんだ。卵を1個とすると、とてもじゃないが入りきらない。箱に入れる必要があるな」


 健太は赤枠に入っていたリアカーを取り出すと、次々に卵を入れ始めた。エルミやゲンナディー達も手伝い全ての卵を乗せる事が出来た。


「後はこれを赤枠の中に入れれば……。よし! 入れられた。『取り出せ』。よし! 問題ないな」


「これでインナーゴウが鉱山で増殖する事はなくなりました。一ヶ所で卵を産む習性があるインナーゴウですから、他の場所にはないと思いますので」


 エルミの言葉に一同は頷くと、飲み物の取り扱いの話しは鉱山から出てからとする事とし、巣の中央に向かった。


 ◇□◇□◇□


「おお。こうやって見ると壮観だな」


「意外と余裕っすね。ケンタ様。俺は凄く逃げて帰りたいです。ミナヅキちゃんもそう思わない?」


『私は気持ち悪いー。早く帰りたいー。羽音が嫌ー』


「では、ケンタ様からもらった殺虫剤を設置しましょう。当初の計画通り、ケンタ様がボタンを押したら全員で逃げながら、殺虫剤を入り口まで順次設置していきます。そして、インナーゴウが襲ってきた場合は私とゲンナディーで迎撃します」


 最深部に止まっているインナーゴウの群れを見て、一同が感想を述べているとエルミが作戦の確認をする。


「よし! それじゃあいくか」


 健太がアイテムボックスから煙幕系の殺虫剤を取り出して気付かれないように設置を始める。


「ケンタ様! 早く起動を! 気付かれました!」


 エルミの悲鳴に似た掛け声に健太は周囲を見渡す。特にインナーゴウに動きがないので、健太が首を傾げた瞬間、周囲を揺るがすような羽音が一斉に鳴り始めた。


「やばい! ボタンは押した! みんな逃げるぞ。エルミ! 煙幕系の殺虫剤は残り10個だ。俺には逃げながら設置する根性がない! 任せても良いか!」


「もちろんです! ゲンナディーは私が設置するまで護衛を! ミナヅキちゃんはケンタ様の護衛を頼みます!」


『頼まれたー』


 一同は健太がボタンを押して煙が出始めたのを確認すると一斉に入り口に向かって走り出した。

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