表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/112

第33話

「本当に久し振りね。2年ぶりくらいじゃない? で? そっちの下僕は見覚えがあるけど、後ろでニヤニヤしているおっさんは誰よ?」


「お姉さま! こちらはケンタ様です! 異世界の勇者で、今回の我が領危機を救ってくださる方です! お姉さまでも無礼は許しません!」


 領主と名乗った女性が男性二人に視線を向けて殺気を飛ばしてくる。ゲンナディーはそれだけで震えていたが、そういった世界とは関わることのなかった健太は全く女性の殺気に気付いていなかった。


「へー。私の殺気を受けても気にもしないなんてやるね」


「いやいや。鋭い視線でしたよ。改めまして。エルミに召喚された健太と申します。ご領主とお目通りがかなって光栄です」


「ふーん。最低限の礼儀はあるんだね。私の名はマリアンナ = ダヴィデンコ。この領地を治めている。エルミとは学院時代に部屋が一緒だったんだよ。それにしてもあんたが異世界の勇者ねー」


 じろじろと無遠慮に視線を投げつけてくるマリアンナと名乗った女性に、健太は苦笑を浮かべながらエルミに頼まれたチョコレートを取り出す。


「こちらは挨拶の品です。これはチョコレートと言いまして――」


「ふーん。これが精霊使いの祝福されたお菓子ねー。挨拶の品と言い切るほどの価値があるんだろうね? 見た目は単に黒い塊だけど? こんな物で機嫌を取るのが勇者様だって?」


 健太からチョコレートを受け取ったマリアンナが胡散臭げな表情で眺める。だが、エルミの表情をみて顔をしかめると袋から一粒取り出して嫌々口に入れた。


「わ、分かったから、そんな顔をするんじゃないよ。エルミの顔を立てて食べるからさ。ん! なんだいこれは! 甘くて美味しいじゃないか! これを宿屋で聴衆にタダで配った? 勇者様はお人好しかい?」


「ひょっとして、昨日の聴衆の中に配下の方が居ました?」


 所々で見ていた事をわざとらしく伝えてくるマリアンナに、健太が苦笑を深めながら話を続ける。


「エルミと私が仲が良いのが気にくわないなら、席を外しますが?」


「ケンタ様っ! ちょっと待ってください!」


 終始、機嫌が悪い表情でいるマリアンナの態度に、健太が気を利かせて席を外そうとする。慌てたのはエルミである。必死の表情で健太が部屋から出ていくのを阻止するとマリアンナを睨みつけた。


「マリアンナ様。ご機嫌が悪いようですので今日はこれで失礼します。ご機嫌がよくなれば改めて会談を致しましょう。次があればですが」


「お、おい。いいのか? この領地が希望だったんだろ?」


「ええ。その通りです。ですが、ここまで意地悪をするマリアンナ様の元で対等な交渉どころか、交渉自体が出来るとも思えません。別の方法を考えま――」


「ちょっと待ったー! ごめん! エルミ! 謝るから! ごめんなさい。ケンタ様!」


 最初は健太が出て行く事に満面の笑みを浮かべたマリアンナだったが、エルミも一緒に部屋から出て行こうとするのを見て、顔を青ざめつつ焦った表情でエルミに縋り付く。


「いーやーでーす! 帰ります。意地悪するマリアンナ様なんて嫌いです!」


「嫌ー。帰らないで! 会えるのを楽しみにしてたんだから! お願いー」


「だったら、ケンタ様に対する態度はなんですか! 今度、ケンタ様に対してあのような事をされたら絶交です!」


 怒り心頭のエルミの表情を見て、マリアンナは何度も頭を下げる。


「それに、私はケンタ様とエンゲージを結んでいます」


「なっ! なんだって……。本当に? ほんとうに、このおっさん……。ケンタ様とエンゲージを?」


 エルミの発言を聞いたマリアンナが愕然とした表情となり崩れ落ちる。あまりの落ち込み振りに健太が心配して声を掛ける。


「お、おい。大丈夫か?」


「い、いえ。大丈夫じゃないです。まさかエルミがケンタ様とエンゲージを結んでいるとは……」


「そもそも、そのエンゲージってのは?」


 健太の疑問にマリアンナの顔に生気が戻る。


「ケンタ様! エンゲージを受けた事がないのですか?」


「いや。そもそも、そのエンゲージの意味が――」


 マリアンナの回答に健太が質問を重ねようとすると、慌ててエルミが遮った。


「ケンタ様! 大丈夫です! エンゲージの意味を知らなくても問題ありません。お姉様。それ以上はなにも言わないでください」


「ふっふーん。なるほどね。まだ秘密にしたいって事ね。まだチャンスがあるのか」


 焦った表情のエルミにマリアンナは嬉しそうな顔をする。その表情を見てエルミはムキになったように話し始める。


「ちなみに私はエンゲージ。水の大精霊様はコネクトを結ばれてますからね。ケンタ様に余計な事をしないで下さいね。それよりも! 話し合いをしましょう。お姉様に塩の融通をして貰いたいのです」


「まあ、もう少し確認したい事があるけど、エルミの顔を立てて聞かないでおいてあげる。それで塩の援助の話だったわよね。情報は集めているいるわ。それにしても面倒くさい相手を怒らせたわね。あっちの領地から塩は期待出来ないわよ? それと、私のところからはそれほど塩の融通は出来ないと思っていて」


 マリアンナの回答にエルミは思わず悲鳴を上げそうになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ