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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

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第29話

「では、出発します! ミズキもありがとう。契約したチョコレートとポテチはケンタ様にお願いして、運ぶからね! あと、たまに遊びに来て良い?」


『当然です。その為の流水晶を2個も渡したのですよ。友にしか流水晶は渡しません。いつでも構いませんから遊びに来なさい。それと、これからのエルミの旅が幸せに包まれる事を見守っています。ケンタ様も遠慮無く遊びにきて下さいね。むしろ私から遊びに行くかもです』


『『『また来てねー。ケンタ様もお菓子ー』』』


 エルミの言葉にミズキと水の精霊達が声を掛ける。自分にも声が掛かった事と、その内容に笑いを浮かべながら健太も応える。


「また、寄らせてもらうよ! これは自分で食べようと思っていた分だが……」


 健太はカバンから金平糖を一袋取り出すと、水の精霊達に手渡す。


『わー。何これー。トゲトゲが付いてるー』


『あまーい。美味しいー』


『これ好きー』


 水の妖精達が金平糖を頬張りながら、歓喜の声をあげつつ踊り始める。ゲンナディーと一緒に居る精霊も欲しそうにしていたので、もう一袋を取り出して手渡すと狂喜乱舞しながら食べ始めた。


「良かったのですか? ケンタ様が自分用に購入されたんっすよね? こいつも喜んでるからありがたいですが」


「ゲンナディー。私にも一個ください! あ、甘い。物凄く甘いです。これは砂糖だけを使ったお菓子ですか?」


 金平糖の甘さにエルミの顔が(とろ)けたようになる。そして、ゲンナディーに剣呑な視線を送る。


「いやいや! 渡しませんよ? これは俺とこいつの為にケンタ様が下さったんですからね!」


「エルミの分もあるから部下から取り上げようとしない。上に立つ者が給料を多く貰えたり、優遇されるのは下の者を育てるためだぞ」


「は、はい! 申し訳ありません。ゲンナディーもごめんなさい……。えっ? ケ、ケンタ様?」


 エルミの手に金平糖の袋が置かれた。健太は茶目っ気を出してウインクしながらエルミの頭を撫でる。


「反省出来たのならいい。反省出来た良い子にはご褒美だ」


「は、はい……」


 真っ赤な顔をして受け取るエルミ。そんな様子を微笑ましそうに見る健太。いつまで経っても出発しない一同に馬車を引く馬が苛立たしそうに(いなな)くのだった。


 ◇□◇□◇□


「急に道が綺麗になったな」


「はい。やっぱり相手側をまずは綺麗にしないと印象が悪いと父が頑張ってました」


 急に舗装された道になり健太は一息を吐く。かなり気合いが入っている道路で、馬車が通っても大きな揺れはなく健太は居眠りをしてた。気持ちの良い日差しの中、まどろみながら気分良くしていると、突然馬車が急停車をする。


「な、なんだ? 故障か?」


「ケンタ様! 気を付けて下さい! 魔物です」


 慌てて周りを見渡すと、緊張したエルミとゲンナディーの顔とふわふわと浮かんでいる精霊。そして、怯えた嘶きを上げる馬。その視線の先には緑色の細長い物体があった。


「なんだ? あれは空豆?」


「近付かないで下さいね! かなり危険な魔物です! ゲンナディーは馬とケンタ様の護衛を頼みます。私が倒します」


「分かりました。俺は命を懸けてケンタ様を守りますよ!」


『私も頑張るー』


 空豆の魔物はツタのような物を鞭のように使い、馬に狙いを付けたのか攻撃を始める。エルミは馬の前に立つとツタの切断を始めた。ゲンナディーも弓を使って援護攻撃をしており、水の妖精も水の矢らしき物を作り出して撃ち放っていた。


「ゲンナディー! ツルを全部落としたら回り込みますから攻撃を続けてなさい!」


「わっかりましたー!」


『頑張るー』


 空豆の魔物の正面にいたエルミは最後のツルを切断すると、勢いよく背後に回る。どこに目があるのか分からなかったが、エルミの方に向いた空豆の魔物の身体が縦に割れる。そして、割れた隙間から種子のような弾を撃ち始めた。


「はぁぁぁ!」


「おぉ! 凄い……」


 連続で放出される種子をエルミは片手剣と体さばきで躱し続ける。全ての種子を撃ち尽くした空豆の魔物は活動を止めたかのように動かなくなる。


「今です! ゲンナディー!」


「よし! 昨日練習した最大魔法だ!」


『はいなのですー』


 水の妖精が大きく手を上げると頭上に水球が出来る。そして、手を振り下ろすと空豆の魔物に向かって解き放った。巨大な水球をもろに受けた空豆の魔物は上半身を吹き飛ばされながらも、しばらく動いていたが徐々に生命活動を止めるのだった。


「やりました! 見て下さいましたか? ケンタ様?」


「ああ。凄かったぞ。ところで何をしているんだ? ゲンナディーは?」


「えっ? 種子を拾ってるんですよ。これを煎って砕いて溶かして飲むと回復薬になるんですよ」


「まあ。思ったよりも簡単に倒せて良かったな」


 一所懸命に種子を拾っているゲンナディーの手伝いをしながら確認する健太。軽い感じの健太の発言にゲンナディーが慌てたように訂正する。


「いやいや! エルミ様がいるから簡単に倒せたように見えるんですよ! 普通はあの種子攻撃で大怪我をしていますからね! ケンタ様のために張り切ったエルミ様を褒めてあげて下さい。俺なら間違いなく逃げてますから」


『ゲンナディー。格好悪いー』


「俺はいいの!」


 ゲンナディーと水の精霊とのやり取りを聞きながら、エルミの強さを改めて感じる健太だった。

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