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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第1章 おっさん異世界に召喚される

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第28話

「おはようございます。ケンタ様。もう、ニワトットリーの時間になってますよ」


「んあ? ニワトットリー? なんだっけ? ああ。8時を過ぎているのか」


 エルミの声に反応して、健太は大きく伸びをしながら時計を確認すると布団代わりの(わら)から抜け出す。生まれて初めての体験だったが、疲れ切っていたようで特に気にもならずに寝たようだった。


「思ったよりも寝心地がいいな。ただ寝起きに藁が身体に入ってチクチクするのはキツいな。取りあえず脱ぐか」


 寝ている時には気にならなかったが、健太の服には藁がかなり入っているようで、気になり出すと我慢が出来なかった。寝台にしていた馬車から降りると、健太は服を脱いで藁を取り始める。


「な、な、なにを?」


「ああ。藁が服の中に入ってな。チクチクするから取ってるんだよ。すぐに終わるから気にしないでくれ」


 顔を赤らつつ、口をパクパクとさせていてるエルミに向かって健太は話す。一緒に布団の中で寝ていたはずのエルミが、自分の上半身を見ただけで恥ずかしそうにしている事に苦笑しながら健太は服を着直した。


「あっ! あ、あの。ケンタ様。よろしければ私がお身体を――」


『ケンタ様。私が魔法で綺麗にしましょうか?』


「そんな事が出来るのか? 便利だな魔法は」


 なにかを言おうとしたエルミを遮るように、ミズキが微笑みを浮かべつつ近付いてきた。その提案に健太は感心した表情を浮かべつつ、魔法で綺麗になる方法を試したいと伝える。ミズキは密着するように健太の腕を取ると、軽やかな声で詠唱を始める。


『ではいきますね。『我は清浄を求めて、汚れを嫌う。クリーン』どうですか? ケンタ様』


「おお! すっきりした。チクチクが無くなっただけでなく、お風呂に入ったような清涼感もあるぞ! ありがとうな。ミズキのお陰でスッキリとしたよ」


 サッパリした表情でミズキを見ている健太。腕を取ったままでドヤ顔をしながらエルミを見るミズキ。歯を食いしばりながら食事が用意されている場所に案内するエルミ。


「ぐぬぬ。せっかく私がタオルでケンタ様のお身体を綺麗にする予定が。結婚前の男性の身体……。いえ、ケンタ様の身体だと、恥ずかしがらずに頑張れば良かった」


「おーい。エルミ。食事をして出発をしよう。俺のせいで到着が遅れているからな」


 ハンカチがあれば噛みしめているであろうエルミの表情には気付かずに、健太は美味しそうな匂いを放っている朝食に釘付けになりながらエルミを呼んだ。


「物凄く、美味そうな匂いがしているな。これはスープカレーか?」


「そうです! これはカーレの卵を煮込んだスープになります。これはケンタ様の国と同じですか?」


 エルミは嬉しそうな顔でスープカレーのような物をお椀に入れて手渡してきた。普通のカレーは食べた事の健太だったが、スープカレーはテレビでしか見た事がなく、恐る恐るな感じで口を付ける。


「美味い。これはいいな。このスープカレーなら朝からでも食べやすいな。中に入っている具材も程よく柔らかくなっていて実に美味い」


「ありがとうございます! これはカーレの卵を取ってきて煮込みます」


「た、卵?」


 相変わらず自分の世界とは違う調理方法に慣れない健太が固まる。そんな様子に気付かずにエルミは嬉しそうな顔で話し始めた。


「はい! カーレが大量にいましたので、卵をいっぱり確保出来ました。朝にカーレを食べると一日が元気に過ごせるのですよ! ケンタ様の為に頑張りました! お代わりを用意しますね!」


「お、おう。そうだな。身体が温まってくるよな。それに飲みやすくて、朝から軽く食べられるのは嬉しいよ。さすがはエルミだな」


 健太に褒められたエルミは嬉しそうにしつつ、カーレの卵を大量に割りながら鍋に投入を始める。歓喜の増量カーレはゲンナディーが奮闘しても食べ残り、精霊達も動員して全てを食べきる頃には、身動きが出来ない健太とゲンナディーから出発時間を1時間ほどずらして欲しいと要請があった。


 ◇□◇□◇□


『エルミさん。ケンタ様が喜んだからと言ってやり過ぎですよ』


「ご、ごめんなさい……」


 食後の後片付けをしているエルミにミズキが注意をする。通常はカーレの卵は一人辺り3個くらいだが、エルミは取ってきた分を全て投入しており、人数にすると10人分以上はあった。


「次は大事に確保しておきます。売れる商品ですからね」


『そうですね。人間には貨幣が必要ですよね。では、エルミさん。貴方にはこれを差し上げます』


 貴重な食品を使い切ってションボリとしているエルミに、ミズキは苦笑しつつ懐から不可思議な光りを放つ小さな球を2個取り出して手渡す。


「こ、これは! ひょっとして!」


『そうですよ。人間が目の色を変える流水晶ですね。2個もあれば色々と出来るでしょう? ちなみに前渡しですからね。チョコレートとポテチをよろしくお願いします。強敵(とも)に対するプレゼントでもありますよ』


「ミ、ミズキ……。ありがとう! ごめんだけど1個は売らせてもらう! でも、1個は大事にする!」


 エルミは流水晶を握りしめながらミズキに感謝を伝えるのだった。

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