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第23話

「ほあー。コーヒーって不思議な味がしますね。俺としてはブラックよりもミルクと砂糖を入れた方が断然美味いっすね」


「そこは個人の好みだな。エルミも甘い方が好きみたいだし、俺も普段は健康に気を付けるために豆乳を入れているが、たまにブラックを飲みたくなるんだよな」


 二人はコーヒーを飲みながらくつろいでいた。最初はブラックの苦さにギブアップしそうになったゲンナディーだったが、健太から砂糖とミルクを足すようにアドバイスをもらうと、その後は口にあったようで美味しそうに飲んでいた。


「それにしてもエルミはどこまで収穫に行ったんだ?」


「ケンタ様の朝食ですからね。全力で張り切って狩られていると思いますよ。愛されていますよねー」


 笑いながら答えるゲンナディーに健太は苦笑を浮かべる。エルミの好意は全力で感じていたが、第三者から改めて言われると恥ずかしさが出てくるのだった。


「そうかな? まあ、確かにエルミからは好かれているような気はするけどな。そうだ。コーヒーだけだと小腹がすくだろう。安いパンを大量に買っているから食べないか?」


「えっ? これが安いパン? こんなに白いのに? 柔らかいのに? 本当にケンタ様の国って凄いですよね。もちろん頂きますよ。当然ながらエルミ様には内緒で食べていいんですよね? バレてもかばってくれますよね?」


 笑いながらパンを受け取って感心しながら食べ始めるゲンナティーの様子に、健太は直章(なおあき)と同じ空気を感じ取りつつ、笑いながらアイテムボックスから大量のパンを取り出した。


「おお! 凄い! こんな大量の白いパンを初めて見た! 本当にこのパンがケンタ様の国では安いんですか?」


「ああ。安いぞ。30個くらい入っていて400円ちょいだな」


 健太の回答からパンの価値は分からなかったが、安いとゲンナディーに伝わったのか嬉しそうな顔で遠慮なく次々と食べ始めた。


「あれ? ケンタ様? パンが少なくなってません?」


「どうかしたか? まだ食べ足りないか? あるぞ?」


 お代わりのコーヒーをドリップして飲む事を決め、ドリッパーにフィルターをセットすると粉を入れて表面をならす。そしてお湯を粉の中心に注ぐ。真剣な表情でお湯をユックリと注いでいる健太にゲンナディーが話しかける。

 申し訳なさそうにしながらも不思議な顔になっているゲンナディーだが、雑味が出ない事に最新の注意を払っている最中の健太には、その表情は映らなかった。


「さっき出してもらったパンは収納しました?」


「ん? 俺が? いや。いったん収納すると、こっちの世界で取り出せなくなるから、収納はしないぞ?」


 突然の質問に答えながらも健太は、ムース状に盛り上がっている山を崩さないようにお湯を注ぎ続ける。


「なんか、さっきより量が減ってる気が……」


「それはゲンナディーが食べたからだろう。追加で出してやるぞ」


「それはそれで嬉しいのですが、やっぱりパンが消えているようにしか……」


 満足のいくコーヒーが淹れられた事に満足げな表情を浮かべた健太が、やっとゲンナディーの不思議そうにしている顔を見る。最初は気のせいだと思っていたゲンナディーだったが、5個残っていたはずのパンが突然1個になったのを目の当たりにして青い顔で悲鳴を上げる。


「ケンタ様! 気を付けてください! なにかいますよ!」


「おいおい。俺たち以外に誰もいなぞ。パンが欲しいならそう言え――」


 慌てているゲンナディーに、健太が苦笑しながら答えようとして固まる。目の前のコーヒーカップが空中に浮いているのを見たからである。


「な、な、な、なんで? 空中にコーヒーカップが?」


『にがいー! なにこれ!』『本当だー! 苦いよー』『でも、あの人は美味しそうに飲んでたよ?』


『『『なんでー』』』


『教えてー』


「なっ!」


 突然、目の前に現れた羽の生えた小人に健太が驚きの声を上げる。4人の小人達は健太のコーヒーカップの周りをぐるぐると回りながら首を傾げていた。


「なんだ? この小人達は? ゲンナディー? どうした?」


「水の精霊様ですよ! 凄い! 俺、生まれて初めてみた!」


 興奮しているゲンナディーを見て、珍しい生き物だと思った健太はミルクと砂糖を入れてかき混ぜたコーヒーカップと、その横に小粒のチョコレートの包装を外して皿に置いて話しかける。


「どうぞ。おチビちゃん達。これは俺の国で食べるお菓子だよ」


『『『『お菓子ー』』』』


 チョコレートに飛びついた水の精霊達は大喜びで食べ始める。気に入ったらしく、大喜びしながら体中をチョコまみれにしつつ食べている様子に健太は微笑みを浮かべるのだった。


「まだ食べるか?」


『『『『食べるー』』』』


 アイテムボックスから取り出されるお菓子達に水の精霊達が大喜びする。ゲンナティーは興奮した表情で水の精霊を眺めており、健太は苦笑を浮かべながら注意する。


「おい。幼女を連れて行きそうな表情になってるぞ」


「ちょっ! なに言ってくれるんですか! 俺がそんな事するわけ無いっしょ! ケンタ様の国では精霊様も珍しくないのですか?」


「いや。見た事も無いぞ?」


 ゲンナディーの問い掛けに健太は軽く首を振って否定するのだった。

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