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第21話

「はー。美味かった。こっちの食事には驚かされてばっかりだよ」


「そうですか? 私もケンタ様の国にある食事にはビックリです。特に先日頂いたパンは絶品でした。あれは何度食べても病みつきになると――」

「これのことか? まだあるから食べたらいいぞ。ゲンナディーさんもどうぞ」


 アイテムボックスからパンを取り出してエルミとゲンナディーに手渡す。感動で震えているエルミと、恐縮したようにパンを受け取ったゲンナディーだったが、一口食べると驚きの表情になった。


「美味い! なんだ、この美味さは? 俺が今まで食べていたパンは一体なんだったんだ? これが異世界の勇者のケンタ様の力の(みなもと)? そんな物を私ごときが食べても?」


「その通りよ! ゲンナディーはお父様と違ってよく分かっているわ! 私もケンタ様から恵みを頂くのはどうかと思いながら貰っているのよ! でも、ケンタ様のお力はこんなレベルではなくて、もっと凄い事を私は知っているけどね! でも、ケンタ様からの恵みを断るなんてダメよ!」


「おぉ! 分かりました! さすがはケンタ様です! そしてエルミ様! 本当にありがとうございます。ケンタ様を召喚してくださって。俺は一生エルミ様とケンタ様に付いて行きますよ!」


「いやいや! お前らの会話が意味不明すぎて引くわ!」


 感動でおかしくなったと思うほど、狂喜乱舞している二人に健太は引き気味になった。しばらく乱舞しているのを眺めていた健太だったが、恐る恐るな感じで話し始める。


「と、取りあえずはパンと一緒にレトルトのコーンスープでも飲まないか? 上手いぞ?」


「「食べますし、飲みます! ありがとうございます!」」


「先ほど見せて貰った銀色の袋ですよね! エルミ様! 絶対に美味しいですよ! 見た感じの袋が魔法道具でした。安心して下さい! 食べてませんよ!」


「芸人か!」


 ゲンナディーの言葉に健太が思わずツッコんだが、当然ながら二人には伝わらず寂しい風が流れた。


「ん! んん! ま、まあ。取りあえずは二人に食べて貰おうか」


 健太は鍋に水を入れ沸かし始める。沸騰したお湯にレトルトパックを投入する。


「ええ! お湯に魔法の袋を直接入れるのですか?」


「ああ。さっきのうどんの作り方と一緒だろ? 火に入れるか、お湯に入れるかの違いだよな?」


「いえ。全く違いますよ! ウードンは普通の植物ですから!」


「植物かよ! そして普通なのかよ!」


 思わずツッコミを入れながら、お湯からレトルトパックを取り出すと封を開けて皿に注ぐ。辺り一面に漂う香りに、エルミとゲンナディーの喉がなった。


「な、なんだ。このもの凄く美味そうな匂いは?」


「よだれが……。涎が止まらない……」


 待ちきれない表情の二人を見ながら、健太はレトルトパックも使えると感じつつ皿を手渡した。


「美味い! 本当に美味いです! ケンタ様!」


「ああ。どうしましょう。これは……。濃厚でいて芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、一口含むと爆発的に甘美なトンモロコーシの味が広がる。トンモロコーシがこんなに美味しくなるなんて! 革命ですよ! ケンタ様! これは料理の大革命です!」


「食レポか!」


 感動の表情でコーンスープを飲んでいるエルミに、健太はもう一袋温めていたポタージュスープを手渡す。


「これは?」


「ああ。これは、ジャガイモを使っているポタージュスープだよ」


 健太の言葉にエルミとゲンナディーの動きが止まった。


「どうかしたのか?」


「い、いえ。まさかジャンガイームを討伐出来る方がいるのですか?」


「さ、さすがに異世界の勇者様がいる国っすね。次元が違う……」


 感動しているような、崇拝しているような表情で見てくる二人に、健太は首を傾げる。


「今度はなんだ? ジャガイモが凄いのか?」


「それはもう! 凶悪最強の魔物ですよ! ジャンガイームが現れたら村を廃棄して、着の身着のままで逃げ出すレベルです。城壁のある領地なら籠城を始めます」


「なんだそれ! どんな凶悪な生き物だよ!」


 健太の叫びに二人は首を竦めながら、恐ろしそうにジャンガイームの生態居について説明をした。


 ◇□◇□◇□


「はー。それにしても美味しかった。あの、ケンタ様。次にこちらに来られる時でいいので、今日食べたのを買って――」


「ああ。安心してくれ。俺の世界は色々と美味しい物はあるからな。買ってではなくてお土産として……。いや、土産は駄目だっ――」


「大丈夫です! ケンタ様からのお土産を楽しみにしております!」


 お土産は特別な物であるとステンかから聞いたのを思い出した健太が、言い方を変えようとするのをエルミが喜びの表情を浮かべつつ遮る。


「そうですよ! 召喚の巫女であるエルミ様なら、ケンタ様がお土産を渡しても大丈夫ですよ!」


「そんなものなのか? だったら、これからはエルミの為にお土産を考えないとな」


「はぅぅぅ。あ、ありがとうございます」


 真っ赤な顔になって感謝を伝えてくるエルミを、不思議そうな顔でみる健太と、尊敬する目でみるゲンナディーだった。

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