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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第108話

「それにしても抽出する時間で濃さが変わるのか」


「私は薄い方が良いですな。ミルクや溶けている砂糖を入れるのは好きではありませんね」


「私もブラックで飲むのが好きですよ」


 デュオとヴァレン、それと健太の3人は水出しコーヒーを満喫していた。ミルクやシロップを入れたパターンも試した2人だったが、最終的には薄めのブラックコーヒーが合うようだった。


「それにしても、これをステンカが淹れたのが気に食わんがな」


「今さら、それを言いますか? 彼にも多少は良いところがあってもいいでしょう」


「はは。面白い冗談ですね。え? 冗談ですよね? ちょ? デュオとヴァレン、黙ってないでなんとか言ってよ」


「やっと素に戻ったか」


「しゃべり方が気持ち悪かったから、これで普通に話せますね」


 ステンカの言葉がいつもと違うと感じている健太やエルミだったが、デュオとヴァレンからすると本来の話し方に戻ってスッキリとしたようだった。


「さあ、次はなにを見せてくれるのだ? まさかステンカのコーヒーだけではないのだろう?」


「もちろんです。ステンカ殿の水出しコーヒーは、お二方以外にも提供している物です。当然ながら、この特別室だけではく、特別なコーヒーも用意していますよ」


 デュオの言葉に健太は微笑んで指を鳴らす。すると厳かな音楽が流れ始め、白い煙が湧き出した。


「な、何事!?」


「これは!?」


「安心して下さい。煙ではありませんよ。臭いはしないでしょう?」


 慌てているデュオとヴァレンに健太が、落ち着くように伝える。確かに臭いはしておらず、安堵した2人が座り直すとユックリとした動きで近付いてくる者があった。


『おまたせなのー。主役は最後に登場するのだよー』


「おお! 水の精霊様が生きている間に見られるとは」


「なんと愛らしい」


 小さな羽を動かしながら飛んできたミナヅキに2人が恍惚した表情を浮かべる。


「ミナヅキちゃんは、神聖な扱いなんだな」


「ええ、最近は身近すぎて忘れがちですが、ミナヅキちゃんは水の精霊様ですからね」


 健太の言葉にエルミが答える。デュオとヴァレンの様子に満足げな笑みを浮かべたミナヅキは機嫌良く健太が用意したコップに近付くと真剣な顔になって、中のコーヒーを見つめ始める。


『いくよー。ふん! たあー。とうー、やー! よいっしゃー』


「あの掛け声だけはなんとかならいなのか?」


「一番、綺麗に出来るらしいですよ。あの掛け声だと」


 遠い目をしている健太に、エルミが楽しそうに笑いながら答えている内にミナヅキはどんどんとラテアートを完成させていく。


『とりゃー! ふー。完成なのだー!』


「おぉ! これは凄い」


「こんな素晴らしいのを飲んでしまえと? なんと贅沢な」


 デュオとヴァレンの2人はミナヅキが描いたラテアートを眺めて感嘆の声を上げる。そこには大精霊のミズキが描かれており、慈愛の表情を浮かべていた。


「この神々しさを感じる方はどなたでしょうか?」


『ミズキ様だよー。疲れたー。ちょっと休憩ー』


 ヴァレンの問い掛けに軽い感じで答えたミナヅキは、羽を休めるためにデュオの頭の上に乗る。慌てた健太だったが、デュオは乗られているのも気付いていないようで穴が開くほどラテアートのミズキを眺めていた。


「これは大事件ではないのか?」


「そうですね。大精霊様が降臨されたのでしょう。まさかお姿を見せて下さるとは。異世界の勇者殿は恐ろしいですね。500年前の勇者殿は名付けはしても、顔までは見せなかったと聞いています」


 真剣な顔で語り合っている事に気付いていないミナヅキは、デュオの頭をタンタンと叩く。


『こらー。せっかく私が作ったのに飲めないのかー』


「お、おお。そうでしたな。ミナヅキ様が――」


『ミナヅキちゃんと呼ぶのだー。はい、これがミナヅキ団のばっちだよー』


「私にも頂けるのでしょうか?」


『もちろんだよー。デュオもヴァレンもミナヅキ団の一員なのだよー』


 ミナヅキからバッチを嬉しそうにもらっている2人に、健太達は微妙な顔になる。ミナヅキ団の活動内容を説明するかは後にしてコーヒーを勧める。


「ミナヅキちゃんが言っているように、早く飲まないのと形が崩れますので」


「おお。そうであったな。恐れ多いが、精霊様と異世界の勇者殿に勧められたとあっては飲まざるを得ないな。頂くとしようか」


「そうですね。私とした事が呆然としてしまいましたよ。そうですね。頂きましょう。間違いなく、世界初の偉業でしょうから。コーヒーに描かれた大精霊様の絵姿を飲むなんてね」


 震える手でコーヒーカップを持ったヴァレンが意を決する表情で一気に飲み干す。それを見たデュオもユックリとコーヒーカップを傾けた。しばらく沈黙が続いてた特別室の時間がデュオの言葉で動き出す。


「……。うまいな。少し甘めなのは気になるが、大精霊様であるミズキ様の優しさを感じるな」


「そうですね。これほどの優しさはないでしょう」


『ふふふ。そこまで褒めてもらえると嬉しい限りですね。お久しぶりです、ケンタ様』


 特別に設置されていた水槽が突然輝き始める。そして、そこから小型の瑞輝(ミズキ)が姿を現した。

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