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異世界に呼ばれたおっさん、異世界の知識がないけど頑張る。  作者: うっちー(羽智 遊紀)
第2章 おっさん躍動を始める

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第107話

「ごめんなさい。もう隠し事はしません。ごめんなさい。私が全面的に悪かったです。ごめんなさい。次からは報告連絡相談は迅速にします。ごめんなさい。早くケンタ殿に領主として活躍してもらいます。ごめんなさい。しっかりとケンタ殿をサポートしていきす。ごめんなさい――」


「おい、エルミ。ステンカ殿になにをしたんだ?」


 ハイライトが消えた目でブツブツと呟いているステンカと、艶々した表情で満足げに微笑んでいるエルミ。若干、引き気味のヴァレンと大笑いしているデュオ。小部屋から出てきた四人を見て、健太は思わず確認した。


「特に何も。ですよね、デュオ様? ヴァレン様?」


「はっはっは! エルミ嬢は将来が有望だな。優秀な貴族の奥方になるだろう」


「そうですね。あの飄々(ひょうひょう)としたステンカが、これほど追い詰められたのですから、相当に優秀なのでしょう。私ならばご免こうむりたいですが、あの勢いで来られたら泣く自信があります」


「いや、本当になにをしたんだよ、エルミ?」


 二人の感想を聞いて健太が再度ツッコミを入れたが、エルミは軽く微笑むだけだった。


 ◇□◇□◇□


「お待たせしました。お二方の為だけに特別な部屋を用意しております。こちらへどうぞ」


「ん? ()()()()()()の特別室だと?」


「ほう。それは楽しみですね。特別な部屋とまで言い切るからには、さぞかし素晴らしい趣向を凝らしてくれているのでしょう」


 健太の説明に期待を膨らませて特別室に入ったが、部屋が薄暗い事に警戒をする。しかし、天井を見上げるように言われ二人は視線を向け、そこに広がる景色に感嘆の声を上げた。


「なんだこれは!? 素晴らしいではないか! 魔道具を使っているのか?」


「星空が部屋の中に広がっている?」


 特別室には健太が用意していたプラネタリウムが設置されており、幻想的とも言える星空を映し出していた。また、部屋の中には聞いたこともない音楽がユックリと流れており、座った椅子も硬さが感じられないほど柔らかなクッションが敷かれていた。


「もう、これだけで値千金じゃな」


「そうですね。この話だけで王都にいる他の高位貴族に自慢が出来ます」


「まだまだこれからですよ。では、最初にステンカ殿が作られた水出しコーヒーをお楽しみください。苦さが好きではないのでしたらクリームとシロップを用意しております」


 しばらくプラネタリウムを楽しんでいるのを眺めながら、タイミングを見て明かり付ける。デュオとヴァレンが名残惜しそうにしながらも感動の余韻(よいん)にひたっていると、健太が静かにコーヒーを運んできた。

 最初に提供されたコーヒーはステンカが12時間かけて抽出した水出しコーヒーであり、氷も水出しコーヒーを使って作るほど念の入れようであった。


「ほう、このグラスには我が家紋が入っているではないか」


「私のグラスにもですね」


「ええ、実は事前に用意させて頂きました。秘密にしているのがバレるかと思いましたが、使用許可だけでしたので問題なかったようですね」


「いえいえ、それは違いますよ。ケンタ殿。私が懇意にしているお二方の腹心に『お館様を驚かせたいのです』とお願いをしたのです」


 驚いている二人の様子に健太が答えると、ステンカがドヤ顔で裏事情を説明した。そんなステンカの顔を見てイラっとした二人だが、アイスコーヒーを飲んで一息つく。


「これは飲みやすいな。後味も爽やかで、今まで飲んだコーヒーと違って嫌な苦みもないな」


「ええ、そうですね。これは素晴らしい。ステンカの頑張りが見えますね」


「そうでしょう! かなり練習をして、配合まで考えましたからね」


 ニヤニヤとしているステンカに二人が近付きながら肩を叩く。


「じゃが、家紋を儂らの許可をもらわずに裏側から利用したのは許せんな」


「そうですね。領主の許可なく使用した者は、事情がどうであれ厳罰を下しておりますね」


「え?」


 ニヤニヤ顔から一瞬で顔面蒼白になるステンカ。どうやらそこまでは考えていなかったようで、小刻みに震えながら救いの目を健太に向ける。


「まさか無許可だとは。ステンカ殿ともあろう方が無法をするとは」


「そんな! ケンタ殿!?」


 デュオとヴァレンの顔が笑っている事に気付いている健太は一緒に流れに乗る。


「お父様、後の事は私とケンタ様にお任せください」


「ちょっ! エルミ?」


 すまし顔で近付いてきたエルミにも見放されたステンカは、絶望したような表情を浮かべた。


「まあ、今回は水出しコーヒーに免じて許してやろうかの」


「そうですね。帰りの馬車で飲む分も用意してくれれば許しましょう」


「します! 用意します!」


 ステンカの態度にデュオとヴァレンの二人は破顔すると、残っている水出しコーヒーを飲み干した。


「それと、このグラスは持って帰るからな」


「そうですね。次回もこのグラスに水出しコーヒーを淹れてくれるのでしょう?」


「その通りです。その為に用意したグラスなのですから」


 アワアワとしてステンカの横で、健太とデュオとヴァレンの二人は楽しそうに会話を続けた。

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