第1話
新作始めました!(冷やし中華的なノリで)
「腰いてえ……」
「おっさん臭いですよ。健さん」
「うるせえよ。俺は四〇を越えてんだよ。久し振りの残業なんて、つらいに決まってるだろうが!」
二人しか居ないフロアで背伸びをしながら呟いた男性に、若い男性が笑いながら話しかけてくる。おっさん臭いと言われた男性の名は打塀 健太。四二才。そこそこ大手の会社で情報システム部に所属しており、主任として部下一人とシステムのメンテナンス中であった。
「思ったよりも時間が掛かりますね」
「ああ。そうだな。無事に終わってくれると良いが、途中で失敗してメンテナンス前に戻すのだけは避けたいな。そんな事になったら営業と日程調整をする必要が出てくる。胃に穴が開きそうだ。さてと、塚腰 直章くん。しばらく待ち時間だからコーヒーでも買って来てくれ」
「なんでフルネーム? いつもみたいに『なお』って呼んで下さいよ。フルネームで呼ばれなくても買ってきますから。当然、俺の分もですよね? 奢りっすよね?」
「当たり前だろ。なおにコーヒーを奢るくらいの給料はもらってるんだよ。これで買ってきてくれ」
「ええ! カードじゃないっすか! せっかく、コンビニで飯も買ってこようと思ったのに」
「お前の性格は分かってるんだよ。まあ、俺も腹は減ったから、ついでに軽く飯でも食うか。万札を渡すから適当に買ってきてくれ」
「おぉ! 太っ腹! さすが独身貴族を謳歌しているだけはある!」
「うるせえ! さっさと行ってこい! それに俺が結婚しないのは理由があるんだよ。そもそも出会いが――」
一万円を手渡してきた健太に、歓声を上げつつからかいながら直章が受け取る。出会いがないから独身だと言い張っている上司の言葉に呆れた表情で問題点を指摘した。
「理由なんてないですよ。健さんに彼女が出来ないのは面倒くさがりだからです。前に俺が紹介した子とはどうなったんでしたっけ?」
「うっ! あの子はマメに連絡を取らないと怒ってくるから、別れたって言ったろ!」
「それです! 健さんは年を考えた方がいいっすよ! その年でも付き合って良いと言ってくれる子は少ないっすからね! もう俺は『四〇才を越えたおじさんでも良い』と言ってくれる子を、数人くらいしか紹介できないですよ?」
面倒くさそうに話す健太に、苦笑しながら直章が指を突きつけながら追い打ちをかけた。
「まだ紹介できるのかよ? まあ恋人は自分でなんとかするから気にするな。今は色気より食い気だろ? 早く買ってこいよ。俺のコーヒーはコンビニで買うなよ」
「コーヒーにだけは変にこだわりがありますね。いつものサイズで、豆乳を追加して比率は半分半分ですよね?」
「おう。さすがによく分かってる。飯は適当でいいぞ」
コーヒー以外はどうでもいいと言わんばかりの健太の言葉に、苦笑しながら扉を開けようとした塚腰の動きが突然止まる。急に動かなくなった様子に首を傾げながら声を掛けた。
「なにしてるんだよ? なお? さっさと早く行ってこいよ。もうすぐ処理が終わるぞ」
声を掛けても微動だにしない様子に、訝しげな表情で眺めていた健太だったが、ふとした違和感を覚えて目の前のPCをみる。
「な、なんだ? 処理が止まってる? いや、時計が止まっている? おいおい。どうなってるんだよ」
起こっている状況に異常さを感じ、慌てて椅子から立ち上がると周囲を見渡す。普段から見慣れているはずの風景が目に入ってくるが、いつもと違う感覚にやっと気付いたかのように呆然としながら呟いた。
「音が無い……」
いつも通りのフロアで無音状態が続く中、健太の耳を不愉快な高音が突然襲いかかる。平衡感覚を狂わされそうな音に耳をふさぎながら、部下である直章の身を案じて叫んだ。
「っ! な、なんだ? 立っていられない! くっ! お、おい! なお! 大丈夫か? 返事しろ!」
よつんばいの状態で、動く気配のない直章の正面に回りながら声を掛ける健太。だが、そこには目を見開いたままの姿しかなかった。まるで動画のコマを抜き出したような異様な状況に、怯えた表情で後ずさりながら思わず座り込んでしまう。
「な、なにが起こってるんだよ? 誰か教えてくれよ……」
へたり込み、呆然としている状態でふと見上げると、そこにはあり得ない物が存在していた。
「な、なんだこれ? ガラス? それにしては薄い。な、なんだ? なにかが書かれている? 『転移まで三分』? カウントダウンしているのか? それに色々な情報が書かれているぞ? なんだ? 俺の名前? それにアイテムボックスレベル1? 全属性適正? 画面が変わった? なに? 『必要な物を早急に準備して下さい』だと? なにをだよ? ――。おいおい。あと一〇秒を切ったぞ。なにか嫌な予感がする。止め方は? どうしたら止められるんだ?」
目の前には浮いている掲示板のような物あり、画面を触ろうと手を伸ばすが、近付いた分は同じく遠のくようで触るどころか近付く事も出来ず、不思議な光景に健太の混乱に拍車が掛かる。
「おい! 誰か! 誰かこの状況を説明してくれ!」
虚しく叫んだ声が、無音の部屋に響き渡る。ゲームにもライトノベルにも興味のない健太には分からなかったが、両方とも趣味として嗜んでいる直章が見たら嬉しそうにしつつ、こう叫んだであろう。
「ステータス画面じゃん! なに? 転移でもするの?」
と。
Twitterの下記リツイートから始まった新作です。
#1rtごとに1話書いてやんよwwwwwwwwwwwwww俺を物書き地獄にして殺してみろよwwwwwwwwwwwwwwwwwwどうせ無理だろうがなwwwwwwwwwwwwwww空気通ります
全てはこのタグから始まりました。ツイートされたのが372RTなので372話まで続きます。
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2022.05.07記載
感想がついていたので、補足です。
上記のように書いておりますが、最後まで書ききれず、途中の112話程で終わっております。
今後のプロットは最終話に箇条書きとして記載しております。