第一話
小さなお魚の男の子は、大きな海の中でひとりぼっちでした。
小さなお魚の男の子には家族がいませんでした。
お父さんとお母さんは、男の子が今よりもっと小さかった頃に人間に食べられてしまったのです。
小さなお魚の男の子には友達がいませんでした。
小さなお魚の男の子は、お日様に照らされると七色に輝くそれはそれは美しい宝石のような銀色のうろこをしたお魚でしたが、あまりにもキラキラとまぶし過ぎたせいで、他の海の生き物たちから嫌われていたからです。
「お前のうろこまぶしスギィーッ!!」
「そうだよ!(便乗)」
「あっちへ(浅瀬の方)行ってどうぞー!(笑)」
今日も小さなお魚の男の子は、意地悪なお魚たちにいじめられて浅瀬の方に追いやられてしまいました。
(あぁ、今日もひとりぼっちになっちゃった…。僕のうろこがまぶしすぎるのが悪いんだ…。こんなうろこがなかったら僕だって、みんなと仲良くなれるのに…!)
小さなお魚の男の子は、ひとりぼっちで砂浜に近い浅瀬をさみしそうに泳いでいました。
お空のお日様の光は、絶えずさんさんと降りそそぎ、白い砂浜と青い海を照らしていました。
お日様の光は小さなお魚の男の子にも降りそそぎ、七色に輝く銀色のうろこは深い海の奥にいる時よりもずっと輝きをまします。
(お日様のばかぁっ!僕をそんなに照らさないでよ…っ!)
小さなお魚の男の子は、うらめしそうにお空の上のお日様を見上げました。
「きゃははっ。冷たくて、きもちぃーっ!」
(うわぁっ!? 人間の声がする!)
小さなお魚の男の子が砂浜の方を見上げると、ひとりの若い女性が波打ち際で楽しそうに裸足でスキップしていました。
(早く逃げなくちゃ! 人間につかまったら食べられちゃう…!)
小さなお魚の男の子は、深い沖の方へ泳いで逃げようとしましたが…。
その女性があまりにも綺麗だったので、みとれてしまいその場でかたまってしまいました!
その女性は、小さなお魚の男の子が今まで見てきた女性の中で一番美しかったのです。
亜麻色の美しい長い髪に白い透き通るような肌、エメラルドのような綺麗な瞳…そして、お日様のように明るい美しい笑顔。
「あらっ! まぁ、きれい! あれは、なにかしら?」
女性は、淡いピンク色のワンピースの長い裾を両手でお上品にたくし上げながら、波打ち際から浅瀬の方へ(小さなお坂の男の子がいる)向かって進んで来ます!
(うわぁっ!? しまった!)
女性は、小さな両手で小さなお魚の男の子をすくいあげてしまいました!
(どうしよう!? 人間につかまちゃったーーー!! 僕、食べられちゃう…!!)
「キラキラの正体はあなただったのねっ! まぁ、なんて可愛らしいっ♡♡♡」
女性は、嬉しそうに両手ですくいあげた小さなお魚の男の子を見つめながら言いました。
「初めまして、小さな可愛いお魚さん! 私は、グレイス。 あなたはどこから来たの? お名前は? 」
グレイスと名乗った女性は、小さなお魚の男の子に優しく話しかけました。
(この人、僕を食べる気はなさそうだけど…。僕はお魚だから人間の言葉は話せないのに話しかけるなんて…ちょっと変わってるなぁ。)
「グレイス! ひとりで海の方へ行ったらダメだって言っただろう?」
(うわぁ!? 今度は男の人が来た!)
グレイスのもとへひとりの男性が駆け寄ってきました。
「あら、エリック! 心配しないで、波打ち際で涼んでただけよ。」
「グレイス、君は泳げないんだろ? 波打ち際でも、高波にさらわれたりしたら大変だよ。」
「もうっ! エリックは心配性ね。私はもう小さい子じゃないのよっ。」