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むっつめ 『それなら殺せ。今殺せ』
生殺しにするぐらいなら今殺せ。
俺はきっとそう呟くだろう。
死に囲まれながら生きるぐらいなら潔く殺されたい。
いわゆる日の本の国的宗教心ではなく、俺は本心からそう願っているのだ。
天を仰ぎ、真っ青な世界に向けて叫ぶ。
「てめえらがそのつもりなら、殺せ。今殺せ」
反応はない。殺してくれない。
解っている。叫んでも、頼んでも、足掻いても、意味は無いことを。
奴等は俺がどれだけ懇願しても殺してくれないのだ。ただ、俺が自発的に死ぬことをにやにやした笑みを浮かべながら待っている。気持ち悪い奴等だ。
いいさ、それなら死んでやる。てめえらの望み通りに。
俺は想像上の剣を抜き放った。光沢も鋭さもない、不可視の剣。
それを、俺は首元に突き立てた。
「死んでやる!」
意を決して剣を押し出す。が、死ねない。
当然だ。剣は想像上の剣にすぎないのだ。斬れも突きもできるわけがない。
結局俺は死ねなかった。だからといって、生きることもできなかったのである。
その後の俺のことは、俺にしか解らない。