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ふたつめ 『おはよう。』
眠たいの。眼が重たいの。朝が怖いの。
あの夢を見続けていたいの。私としてここに居続けたいの。
カーテンの隙間から光。眼を、瞼を、刺す。何者かが私を朝に引き起こそうとしている。
アラームの音。私が好きな音楽の音。それさえも、朝の恐怖には敵わない。
『おはよう。』
『……おはよう。』
耳に幻想が聞こえる。私はその幻想に挨拶を返した。
遠い過去の記憶。朝がまだ怖くなかった頃の記憶。夢にも出てこなかった、そんな何でも無い記憶。
『おはよう』
私は現実に口を動かした。
『おはよう』
もう一回。
何も、救われることは、なかった。
ただ朝が深みを増すだけだったのであった。
私から記憶は溶け去り、また、機械的な朝への憂鬱がぶり返す。そんな、いつもの朝だった。