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第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その54)

「そりゃあ、そうですけれど・・・・。」

哲司は、なぜか無理やり同調させられているような気になる。


確かに、大人の常識からすればこのマスターが言っていることは正しいと思うし、否定する部分はまったく無いのだが、それだけにわざわざ「そう思われるでしょう?」と問われることに違和感がある。



「そこで、ひとつお願いなのですが・・・・。」

マスターが一度腰を軽く浮かせてから座りなおした。


「・・・・・・・・・・」

哲司は、それに対して何も言えない。

いや、言わなかったというのが正しい。


「私、先ほど、奈菜とお付合いを頂くに当たって、何も制約はないと申しました。

巽さんのご意思のままで、ご自由にと。

お茶でもどう?というところから始めていただければいいですし、もちろん、あの子が望むのであれば男と女の関係があっても構わないと思っております。


こんなことを祖父の私から申し上げるのは不謹慎だとは思います。

それこそ、非常識だとも思います。


ですが、お願いです。

奈菜と夫婦になれるかどうかを見極めるためのお付合いをお願いしたいのです。」

マスターが、また頭を下げた。



「えっ!・・・・それって、やはり結婚を前提に、ということですか?」

あれだけ確認したのに、と哲司は不信感を抱く。


「いえ、そうではなくて、ですね。

ご自由にお付合いを頂いている間に、奈菜が巽さんの妻に相応しいかどうかをお考え頂きたいということだけです。


ですから、結果として、妻としては不合格だということになれば、それで終わっても、それはそれで構いません。


極端なことを言えば、同棲って言うんですか?

一緒に暮らしてみて、それをお確かめ頂くのでも構わないとさえ思っております。

ただ、その場合は、学校も辞めさせなければなりませんが。」

マスターは、手にした「診断書」を握り締めるようにしてそう言った。



哲司は訳が分らなくなっている。


奈菜が誰だか分らない男に強姦されて妊娠をした。

なのに、奈菜はその子を産みたいと言っている。

そして、周囲も、どうやら強権発動をしてそれを阻止するつもりもないようだ。


その一方では、高校生の奈菜がひとりで子供を育てる事は難しいだろうとも言う。

この部分は常識的だ。


そうした中で、この俺に男女の仲になっても構わないから付き合えと言ってくる。

しかも、結婚できる相手かどうかを確かめろと言う。

そのためには、同棲をさせても構わないと言う。

その結果責任は求めないとも言う。

これは、どう考えても非常識だ。



哲司は、改めてマスターの顔をじっと見る。



(つづく)



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