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第9章 あっと言う間のバケーション(その133)

(ええっ! 足で踏むんだ・・・。)

哲司は驚く。まさか、そんなことをするとは思っていなかったからでもある。


で、祖父が糸鋸を手にする。


「短いのに、まだ切るの?」

哲司が祖父と祖父の足の下にある短い竹を見比べるようにして訊く。


「ああ・・・、この部分をな、少し斜めに切るんだ。」

祖父は、そう言ったかと思うと、手にしていた糸鋸で竹を切り始める。


「ガリガリガリ・・・」と、5~6回動かしただろうか。

竹の切れ端が囲炉裏の中の灰の上に落ちた。


「よし! 切れた。」

祖父がにっこりと笑う。


「は、早いね。」

「ああ、そうだろ? 細い竹だからな。ほら、こう切るんだ。」

祖父は、そう言って、自分が切った短い竹を哲司に手渡してくる。


「あああ・・・、こんなふうに、斜めに?」

「ああ、そうだ。哲司もやってみな!」

「う、うん・・・。」

哲司も、祖父と同じように片膝を立てる。

そして、これまた祖父の真似をするようにして、その足で竹を踏んで押さえる。


「で、糸鋸を持って・・・。」

祖父がそう声を掛けてくる。


「う、うん・・・。」

そうは答えるものの、哲司の手には、既に汗が吹き出ていた。


「しっかりと持つんだぞ。両方とも。」

「う、うん。」

哲司は糸鋸を手にして、それを足で押さえている竹に当てる。

頭の中では、切るべき線がちゃんと描かれていた。


「糸鋸は、引くときに力を入れるんだぞ。」

「う、うん・・・、分かってる・・・。」

哲司も、糸鋸は学校で使ったことがあった。


で、ゆっくりと糸鋸を動かす。

「ガリガリガリ」という音がした。

哲司は、唾を飲み込む。


「そうだ、上手い。それで良いんだ。その調子だ。」

祖父が声を掛けてくれる。


と、7度目ぐらいでまで来たときだった。

「これが最後だ。ゆっくりと引けよ。」

「う、うん・・・。」

哲司がそう答えるのと同時に、竹の切れ端がぽんと下に落ちる。



(つづく)







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