第9章 あっと言う間のバケーション(その125)
「爺ちゃんも、娘がひとり、またひとりと結婚をして片付いていくと、淋しくなってくるんだな。
もちろん、お嫁に行って幸せになってくれるのは嬉しい。
嬉しいに違いないんだが、ある面では、やっぱり淋しくなるんだな。
家族が減るんだし・・・。」
祖父は、どうしてか、哲司の方から視線を外すようにして言ってくる。
「ああ・・・、そ、そうか・・・。」
そうは言ったものの、哲司にはもちろんそうした実感は分からない。
そうした経験もない。
「で、特に、こうした夜の時間になると、その淋しさがぐんと増してくるんだ。
だから、何かをしていないと・・・って気持になる。」
「・・・・・・。」
「だからなんだろうな・・・。この竹細工が辞められないのは・・・。」
「ん? さ、淋しいからなの?」
哲司は、今、祖父がそう言ったように思えた。
「ああ・・・、きっとな・・・。
だからなんだろう、それまではザルなんかの実用品を作っていたのが、いつの頃からかこうした竹人形ばかりを作るようになった。
ま、買ってくれる会社があったからでもあるんだろうが・・・。」
「そ、そうなんだ・・・。」
「で、婆ちゃんが死んでからは、今度は逆に、何もしたくなくなった・・・。」
「ん? 竹人形も作らなかったの?」
「ああ・・・、3ヶ月ぐらいはそうだったかな・・・。
だから、夜になったら、ただテレビを見て、そして、後は寝るだけ・・・。」
「・・・・・・。」
「でも、これじゃあ駄目だって気が付いたんだ。
哲司のお母さんも言ってくれたしな。」
「ん? お母さんが?」
「ああ・・・、そうだ。哲司の家に来ないかって・・・。一緒に住もうって・・・。」
「う、うん・・・。」
哲司も、母親がそうした話を電話で言っているのを耳にしたことがあった。
「でもな・・・、爺ちゃん、この家から離れたくはなかった。
かと言って、いつまでもこんなどこか魂が抜けたような気持で生活していると駄目だって・・・。
そんなだから、お母さんが心配をしてくれてるんだって・・・。
そう気が付いたんだ。」
「・・・・・・。」
「で、また、竹細工をするようになったんだ。」
「そ、そうだったんだ・・・。」
哲司は初めて聞く話にドキドキするものを覚えた。
「それからなんだ、竹笛に挑戦し始めたのは・・・。」
「えっ! そ、そうだったの?」
哲司は驚いてしまう。
哲司のイメージでは、もっと昔から祖父が竹笛を作っていたものと思っていたからだ。
(つづく)