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第9章 あっと言う間のバケーション(その121)

「ええっ! お、お母さんも、そうだったの?」

哲司は、にやりとしたい気持を抑えて言う。


「ああ・・・、ま、もちろん、子供のときなんだが・・・。」

祖父は、そうした哲司の顔をチラッと見るようにして言ってくる。


「竹人形を作って欲しいって言うから作ってやったんだ。世界に1個しかない人形をな。

そうしたら、喜んで喜んで・・・、学校にも持って行って自慢していたらしい。

それなのに、1週間もしたら、“私の竹人形知らない?”って・・・。

どこにあるのか分からなくなったらしい。」

「そ、それで?」

哲司は、その後のことが気になる。

今の自分と重なるところがあるからだろう。


「婆ちゃんや姉妹をひとりずつ捕まえては訊いていたようだが、結局はそれっきりだった。」

「見つからなかったの?」

「その時にはな。」

「ん?」


「だから、爺ちゃん、言ったんだ。

失くすってことは、その物に対する気持がないからだって。」

「・・・・・・。」

哲司は何も言えない。まるで自分に言われているようでだ。


「でも、お母さんは偉かったな。」

「ん?」

「すぐに、もう1個だけ作ってくれって言ってくるかと思ったんだが・・・。」

「言わなかった?」

「ああ・・・。やっぱり失くしたのは自分の責任なんだと思ったんだろうな。

ところがだ・・・。」

「んん? 続きがあるの?」


「それから、5~6年ぐらい経った時だったか、お母さん、もう中学生になっていたんだが、その時に、たまたまだが、大掃除をしたんだな。

で、もうお母さんも中学生なんだから、子供の部屋は自分たちで大掃除をしなさいって言ったんだ。

するとだ、その時、お母さんが小さいときに気に入っていた可愛い鞄が押入れの奥から出てきたらしいんだ。」

「そ、それで?」

「なんと、その鞄の中に、失くした筈のその竹人形が入っていたんだ。」

「ええっ! で、出てきたってこと?」


「ああ・・・、お気に入りの鞄に入れておいたってことなんだろう。

でも、それを忘れてしまったってことだ・・・。」

「じゃあ、失くしたってことじゃあなかったんだ・・・。」

哲司は、その結果からそう思った。


「う~ん・・・、どうなんだろうな。」

「ち、違うってこと?」

哲司としては、その竹人形が出て来たのだから、結果としてはそうだったのだろうという気持があって訊き返す。



(つづく)






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