表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
921/958

第9章 あっと言う間のバケーション(その110)

その夜。

哲司は、囲炉裏端にちょこんと座っていた。


「テレビを見ても良いぞ」と祖父に言われたのだが、哲司は「爺ちゃんは?」と問い返した。

祖父がどうするつもりなのかを知りたかったからだ。

一緒に入った風呂の中でのことだった。


「そうだな、いつもと同じで、竹細工を作ろうと思ってる。」

祖父はそう答えてきた。

で、哲司もそれに付き合おうと思ったからだった。



晩御飯が終わって、後片付けをした。

祖父が使った鍋を洗っている間に、哲司はガスコンロを片付け、そしてテーブルを覆うように敷き詰めていた新聞紙を取りまとめる。

やはり、それなりに油が飛び散っていた。

祖父が言っていたとおりであるし、そのための新聞紙だったことを改めて実感する。


「これ捨てるの? 捨てないよね?」

哲司が問う。

家であれば、迷わずゴミ袋に入れていただろう。

だが、ここでは、どうにもそうではないように思えた。

祖父のことだから、こうした新聞でもまた何かに使うのかもしれないと思った。


「ああ、それな。よく気が付いたな。」

祖父は、哲司がそう訊いたことを褒めてくれる。


(や、やっぱり・・・。)

哲司は、自分の勘が当たったようで嬉しくなった。


「それな、重ねて良いから、竈の横に置いておいてくれ。後で、焚きつけに使うから・・・。」

「う、うん。分かった・・・。」

哲司は小走りで運んでいく。


その油が飛び散った新聞紙を炊きつけにして沸かした風呂に入ったのだ。

昔ながらの五右衛門風呂である。



「どうした? テレビ、見ないのか?」

祖父は、風呂あがりの冷たい麦茶を手にして言ってくる。


「う、うん・・・。面白いのやってないし・・・。」

「そ、そうか・・・。」

祖父はそう言っただけで、それ以上のことは触れてこなかった。


「眠たくは無いか?」

「う、うん、大丈夫だよ。まだ早いし・・・。」

「そ、そっか・・・。でもな、哲司、今日は良く働いたしな・・・。疲れているんじゃないかって思ってな。眠たくなったら、いつ寝ても良いんだぞ。」

「う、うん・・・。」

哲司は、そう言われて嬉しかった。

「早く寝なさい」ではなく、「いつ寝ても良いぞ」って言われたことがだ・・・。



(つづく)






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ