表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
916/958

第9章 あっと言う間のバケーション(その105)

「そ、そうだ!」

祖父が何かを思い出したように言う。


「ん?」

「哲司、冷蔵庫を開けてな、プチトマトを出して来い。」

「ん? プチトマト?」

「ああ・・・、今日、昼に食べたろ?」

「あっ、うん、そうだったね。」

「で、何かを思い出さんか?」

祖父は、自分の湯呑にもう一杯お茶を注ぎ入れながら言ってくる。


「あああ・・・。」

「思い出したか?」

「う、うん。どうして、冷蔵庫で冷やさないかって・・・。」

「おお、よく覚えていたな。賢い賢い。」

「そ、それを今食べるってこと?」

哲司は、その時の場面を思い出しながら確認する。


「そ、そうだ。出してきて、食べてみな。今晩、食べるって言ってたろ?」

「う、うん・・・。」

哲司は、席を立って冷蔵庫のところへと行く。

そして、中から器に入ったプチトマトを取り出してくる。


「う~ん・・・、よ~く冷えてる。」

哲司は、器を持った感触のままを言う。


「食べてみな?」

「う、うん・・・。」

哲司は持って来たプチトマトをそのまま口に入れる。


「うわっ! つ、冷たい・・・。」

「・・・・・・。」

祖父は何も言わない。


哲司は口の中でそのプチトマトを歯の上に乗せる。

これからがぶっと噛むつもりでだ。

で、歯で切り裂くようにして噛む。


「う、うわっ! ・・・・・・。」

哲司は、そう叫んだだけで、それに続く言葉が出せない。


「どうだ? 美味いか?」

祖父は、まるで哲司の味覚が伝わっているように訊いてくる。


「す、酸っぱい・・・。」

「ン? 甘くは無いのか? 昼に食べたとき、哲司、そう言ったろ?」

祖父が畳み掛けてくる。


「うっ、う~ん・・・。これ、同じトマトだよね?」

「ああ、あの時、哲司の目の前でそのひとつを入れただろ?」

「ど、どうして、こんなに酸っぱくなったの?」

「だから、言ったじゃないか。冷蔵庫に入れずに、ああして井戸水で冷やすのが一番なんだって・・・。」

祖父は、如何にも酸っぱくなるのが当然という顔をする。



(つづく)






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ