第9章 あっと言う間のバケーション(その102)
「う、う~ん・・・、そ、そうなのかなぁ~・・・。」
哲司はどことなく納得できないものがある。
家だと、学校から帰ってくると、すぐに外に遊びに出る。
野球やサッカーといったスポーツ系が大半だが、兎も角全身を使って遊んでいる。
だから、夕方の5時前になれば、もうお腹はペコペコだ。
晩御飯が楽しみになる。
それでもだ。こんなに食べた記憶はない。
運動量からすれば、きっと家で友達と遊んでいる方が体力を使っていると思うのだが・・・。
「良いか! お腹が減るってことは身体が食べ物によるエネルギーの補充を求めているってことなんだが、それは脳味噌も同じなんだ。」
祖父は食後のお茶を入れながら言ってくる。
「ん? 脳味噌も?」
「ああ・・・、脳味噌だって、使えばそれだけ体力を使うんだ。」
「ほ、ほんと?」
哲司は、脳味噌は別のような気がする。
「ああ、間違いは無い。だから、頭を使えば、お腹も減るんだ。
哲司が、いつもより沢山食べられたと思う分は、それはきっと脳味噌が要求した分なんだろう。」
「う~ん・・・、でも・・・。」
「ん? 違うってか?」
「ぼ、僕、今日、勉強もしてないし・・・。」
哲司は実感としてそう言う。
脳味噌が要求するほどには使っていないと思ったからだ。
「あははは・・・。何だ、そんなことか・・・。」
「んん?」
「勉強することだけが頭を使うってことじゃあないだろ?」
「そ、そうなの?」
「もちろんだ。こうして普通に生活をしていく上にも、常に頭を使うことが大切なんだからな。
哲司は、今日、いろんな新しいことに出会っただろ?」
「新しいこと?」
「ああ、初めての人と出会ったし、初めての牛にも出会って、そして、初めての犬にも出会ったろ?」
「う、うん・・・、それはそうだけど・・・。」
哲司は、それと頭を使うってのは関係が無いだろうと思う。
「そうした人や動物と出会って、いろんなことを感じただろうと思うんだ。違うか?」
「う、うん、それは、いろいろと・・・。」
「だろ? それが、そうした新しい経験ってのが、脳味噌を使わせるんだ。」
「う、うっそう~!」
哲司は信じられない。
頭を使うってのは、もっと難しいことを考えることなのだという観念があったからだ。
その代表的なものが、勉強である。
そして、哲司がもっとも苦手とするものでもある。
「いや、嘘じゃあない。新しい経験ってのは、人に、そして脳にそれだけ刺激を与えるんだ。」
祖父は、自分の額を指し示してそう言ってくる。
(つづく)