第9章 あっと言う間のバケーション(その100)
「だから、こんな手間なことはしないんだ。台所で自分の手で揚げてしまうんだ。」
祖父はそう説明してくる。
「う、う~ん・・・、だったら、家じゃあ出来ないってこと?」
哲司がそう確認する。
だとすれば、素揚げにしてほしいと言う意味が無くなるからだ。
「いやいや、そんなことはない。」
「で、でも・・・。」
「だから、そうした手間の部分を哲司がやると約束をすれば良いんだ。」
「ん? 約束?」
「ああ、コンロや新聞紙の準備もするし、後片付けも哲司がすると言えば良いんだ。
そうすれば、お母さんだって考えてくれるさ。」
「ほ、本当に?」
「ああ、間違いないと思うな。
ただし、そうして言った以上、その言葉どおりに準備と後片付けは哲司がちゃんとやるんだぞ。
それさえできるんだったら、お母さんにも反対する理由は無いだろう。
その約束が出来るか?」
「う、うん・・・。出来る。」
「おお、だったら大丈夫だ。
そのためには、ここで後片付けまでしっかりと覚えて帰ることだな。」
祖父は、そう言ってにっこりと笑った。
「うん、ちゃんと覚えて帰る。」
哲司はそう言い切った。そして、言葉を続けた。
「その代り・・・。」
「ん? その代りって?」
「僕がここにいる間に、もう一回はこの素揚げをやって欲しいんだけど・・・。」
「あああ・・・、よし、分かった。じゃあ、哲司が帰る前の晩にしてやろう。」
「ええっっ! そ、それまでは?」
「あはは・・・、冗談だ。そんなに気に入ったのであれば、2~3日経ったらしてやるよ。
それに、哲司の準備と後片付けの練習にもなるからな・・・。」
「う、うん・・・、ありがとう・・・。」
今度は哲司がにっこりとする。
「じゃあ、どんどん食べろ。食材、まだこんなに残っているからな。」
「う、うん・・・、食べるよ。」
哲司は次の食材を探しに行く。
結局は、祖父とふたりで、準備された食材のすべてを食べてしまう。
「そのウインナーの蛸で最後になるんだが、まだ食べるか?」
祖父は眩しそうな目でそう訊いてくる。
「ううん、も、もうお腹一杯だよ。」
「そ、そうか・・・。でも、良く食べたなぁ~。てっきり野菜は余るだろうと思ってたんだが・・・。」
祖父が感心したように言う。
「でも、残しちゃあ、申し訳ないんでしょう?」
哲司は、祖父から教えられた言葉を思い出して言う。
(つづく)
■読者の皆様へ
いよいよ本日で平成22年も終わります。
この1年、拙い小説にお付合いを頂きありがとうございました。
どうぞ、良い新年をお迎えください。
なお、新たな連載、『餓鬼棚』を書き始めました。
こちらの作品も、またよろしくお願いを致します。