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第9章 あっと言う間のバケーション(その96)

「そうして呼ばれたとき、たまたま哲司が漫画を読んでいたとしよう。」

祖父は、哲司の反応を探るようにしながら言ってくる。


「う、うん・・・。」

哲司にも同じ経験は何度もあった。


「そんなとき、哲司はどうしてるんだ?」

「う、う~ん・・・、晩御飯のときは、すぐに行くよ。」

「ん? 晩御飯? ああ・・・、お父さんがいるからか?」

「う、うん・・・。」

「じゃあ、お父さんがいないお昼ご飯のときは?」

「もうちょっと待ってって言う。」

「ど、どうしてなんだ?」

「漫画の区切りのところまで読んでしまいたいから・・・。」


「読み終わってから行くのか?」

「う・・・、うん・・・。」

「そんな時、お母さんは何て言うんだ?」

「しょうがない子ねって・・・。」

「それだけ?」

「何か、ブツブツ言われるけれど・・・。」

「何て?」

「う、う~ん・・・、覚えてない・・・。」


「だ、だろ?」

祖父は、そこに力を込めて言ってくる。


「ん? な、何が?」

哲司は、祖父が言っている意味が分からない。


「ひとつには、哲司がすぐに行けない理由をちゃんと言ってないってことだ。

で、もうひとつは、お母さんが言っていることをちゃんと聞こうとしていないってことだ。」

「う、う~ん・・・、でも・・・。」

「でも?」

「漫画読んでしまいたいからって言ったら、お母さん、怒るんだもの・・・。」

「ど、どうして?」

「そんなもの、後にしなさいって・・・。」


「じゃあ、哲司は、どっちの言い分が正しいと思う?」

「ど、どっちのって・・・。」

「お母さんが怒るのが正しいか、それとも、哲司が言うことが正しいのかってことだ。」

「うっ、う~ん・・・、そ、それは、お母さん?」


「おお、ちゃんと分かってるじゃないか。」

「で、でも・・・。」

「哲司の言いたいことは分かる。漫画、面白いのだろうし・・・。

でもな、仮にだ、その時に哲司が宿題か何かをしていたとしたら?」

「ん? 宿題を?」

「ああ・・・、宿題をしているときに、ご飯に呼ばれたとしたら?」

「そ、それだったら・・・、今宿題してるからって・・・。」

「そう言うんだろ?」

「う、うん。」

滅多にそうした場面は無いのだが、もしあれば、きっとそう言うだろうと哲司は思った。



(つづく)







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