表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
889/958

第9章 あっと言う間のバケーション(その78)

皿が2枚あるのだから、当然に祖父と自分のものなのだろう。

哲司はそう思った。

で、1枚ずつをそれぞれの席のところへと置く。


「この紙は、手が汚れるからなの?」

油を持って来た祖父に哲司が訊く。


「あははは・・・。ま、そういう使い方も出来るが、爺ちゃんが用意した意味はちょっと違うんだなぁ~・・・。」

祖父は笑いながらそう答えてくる。

ここら辺りが家とは違うのだ。祖父は、頭から否定してこない。

だから、その後の言葉が素直に聞けるのかもしれない。


「じゃ、じゃあ、どういう風に使うの? お皿が汚れないように?

でもないよねぇ~・・・。」

哲司は自分で言って自分でそれを取り消しに掛かる。


「・・・・・・。ま、そのうちに分かるさ。」

祖父は、哲司に考える時間を呉れたようだった。



「ん? これって、ゴマの油なの?」

哲司が立て続けに訊く。


「おおっ! よく、ゴマ油だって分かったなぁ。」

「だ、だって・・・、そう書いてあるから・・・。」

哲司は、祖父が手にしていた油の容器を指差して言う。

「純正ゴマ油」と書かれてあったからだ。


「あはは・・・、なるほど・・・。じゃあ、哲司の家ではサラダ油なのか?」

「う~ん・・・、知らない。」

「そ、そうか・・・。ま、そうだろうな。子供は、美味しければ何だって構いやしないしな・・・。」

祖父は、照れたように笑う。


「う、うん・・・。でも、そのゴマ油って美味しいの?」

「別に、油が美味しいわけじゃあない。ただ、身体に良いと言われているのと、この香りが爺ちゃん好きでな・・・。」

「ふ~ん・・・、そうなんだ・・・。」

「哲司も、これで素揚げしたものを食べれば、きっとその良さが分かると思うぞ。」

「う、うん・・・。」



祖父が、持って来たゴマ油を鍋の中へと注ぎ入れる。


「た、たくさん入れるんだねぇ~・・・。」

哲司は感心したように言う。家で母親が天麩羅を揚げているのを遠くから見たことがあるが、こんなに並々と入れていなかったような気がしたからだ。


「たっぷりの方が美味しいんだ。それにな、油の温度が一定に保てるんだ。

で、結果として、美味い素揚げが食えるってことだ。」

「そ、そうなんだ・・・、分かった・・・。」

哲司は喉がゴクリと鳴るのを覚えた。



(つづく)






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ