表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
863/958

第9章 あっと言う間のバケーション(その52)

「縁起が良い・・・。」

哲司は、その言葉は好きだった。

別に、宗教を信じるとかではないのだが、それでも「縁起が悪い」よりは「縁起が良い」と言われるほうが嬉しいに決まっている。


「そんな部屋で寝てるんだぞ。哲司は。

だから、きっとここにいる間に、何か良いことがあるだろうて・・・。

なっ!」

祖父は、最後の「なっ!」に力を込めた。


「う、うん、そうだと嬉しいけど・・・。」

哲司の本音である。



「で、3つ目が、これまた重要なんだ。」

祖父は、また新に指を折ってみせる。


「じゅ、重要?」

「ああ・・・、非常に実用的って言っても良い。」

「・・・・・・。」


「この部屋は縁側に面している。」

「う、うん・・・。」

「今は、風を通すために襖や障子を全部取っ払ってあるんだが、秋になって少し涼しくなってきたら、こっちとこっちには障子戸を嵌めて、こっちとこっちには襖を嵌めるんだ。

つまりは、四方を閉じることになる。」

「ああ・・・、そ、そうか・・・。だったら、寒くはないよね?」


「まあ、それはそうだが・・・。ところでだ。ここでクイズだ。」

祖父は楽しそうに言ってくる。


「ええっ! ク、クイズ?」

哲司は、勉強も苦手だったが、どちらかと言えば、クイズも苦手だった。


「そうして四方を襖や障子で閉めたら、この部屋にはどこから入るんだ?

つまりは、どこがこの部屋の出入り口になる?」

「ええっっっ! で、出入り口?」

哲司は問われている意味すら分からないぐらいだ。


哲司の家には和室もありはする。

それでも、ちゃんとしたドアがあって、そこを開けると中に畳が敷かれているというのが和室に対するイメージだった。

だから、それだと、出入り口もここだと言えるのだが・・・。


この祖父の家では、そのドアというものが殆どない。

玄関のドアと、裏庭に出るいわゆる裏口についているドアぐらいだ。

後は、家中、ドアを一切開け閉めしないでどこにでも行けるようになっている。


それなのに、突然に「この部屋の出入り口は」と訊かれても・・・。

それが哲司の本音である。


(つづく)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ