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第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その44)

「それにね、奈菜ちゃんはお父さんに叩かれるほど叱られたと言ってました。

それで、僕はお父さんは産むこと自体に反対をされていると思ったのですよ。」

哲司は、マスターが言っていることとの温度差を指摘するつもりでそう付け加える。



「奈菜は、産んで自分で育てたいと言っているんです。それに父親は反対しているのです。

つまり、産むのは致し方ない。だが、その子は男が責任を持って育てるべきで、奈菜が育てることはない、と言うのが彼の考えなのです。」

マスターはそう言って、向いのコンビニの方を見やる。


「それも、どうかとは思いますけれど・・・。

第一、仮にその相手の男を見つけ出したとしても、素直に引き取りはしないでしょうしね。現実的ではないと思いますよ。理想論なのかもしれませんが、実現性はないでしょうね。」

哲司は次第に腹が立ってくる。

どちらも、奈菜の幸せを考えた言葉が出てこない。


「そりゃあ、できることならば、奈菜の思い通りにさせてやりたい。

そうは思います。

でも、だからと言って、あの子の思う通りには世の中うまくは行きません。

そんな、甘いものじゃない。」

マスターは、少し強い口調でそう言った。


「でしたら、やはり、マスターから直接奈菜ちゃんにそうした思いを話されるべだと思いますよ。

お爺さんとして、そのことをお話になったんですか?」

哲司は、どうもその辺りが合点がいかない。


奈菜には「反対されただろう?」と訊いたが、彼女はただ「うん」と言っただけで、具体的な反対意見について、「こう言われた」とまでは話していない。

それでいて、「てっちゃんも反対?」とこちらの意向を訊いて来ている。

それだけ、緊迫感が薄いような気がしてならないのだ。

どうしてなのだろう?



普通、高校生の女の子が強姦された場合、警察へ被害届を出すだろう。

仮に本人は恥ずかしいとか、傷かつくとかの感情があって届けることに躊躇することも考えられるが、家族がその事実を知った場合はそれでは済まないだろう。

憎き犯人を捕らえたい、そして頭を下げさせたいと思うはずである。


だが、ここに「妊娠」という結果が追加されたときはどうだろう?

警察に届けるかどうかはさらに微妙にはなるが、少なくとも、子供の処分は真っ先に考えることではないか。

つまり、まさに交通事故に遭ったのと同じように捉えるのが常識的だ。

まずは、事故による傷、子供が出来たという傷を治すところから始める。

それが最優先され、賠償問題はその後に来る。


それなのに、どうも、奈菜の場合はそうではないような気がするのだ。

どこかが変である。



(つづく)




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