第9章 あっと言う間のバケーション(その48)
「や、やってみる・・・。」
哲司はそう言って前に出た。
非常に珍しいことなのだが、どうしてか、哲司は「やれそう!」と感じたのだ。
だから、そうした感覚が消えてしまわないうちに、何とかしたかった。
「ほうほう、じゃあ、やってみろ!」
祖父は、多少驚いたような顔をしたものの、にやりと笑ってその場を譲ってくれる。
「ええっと・・・、これをこっち向きにすると・・・、次はこっち向けかな?」
哲司は、先ほど閃いた感覚を元に新聞紙を持っていく。
「おうおう・・・、そ、それで?」
祖父の声が明らかに変化した。どうやら、ここまでは正解らしい。
哲司は、ちょっぴり、ほんのちょっぴりだが自信を持つ。
「で・・・、こっちの角も、こう向きにおいて・・・。あれれ?」
「それだと、ここの部分が大きく開いてしまわないか?」
祖父がそう指摘して来る。
「う、うん・・・、そ、そうだねぇ・・・。」
哲司は、小さく溜息を付く。
折角「やれそう!」って思ったのに・・・とである。
「ん? ど、どうした?」
祖父が背後から檄を飛ばしてくる。
哲司の手が止まったからだろう。
「う、う~んとね・・・、ちょっと、ちょっとだけ待って・・・。」
それでも、哲司は何とかしようと思う。まだ、投げてはいない。
少なくとも、最初の1枚目、2枚目は、この並べ方で合っているようだ。
それで、その反対側の角も同じようにしたのだが・・・。
「おう、ゆっくり考えたら良い。何も慌てる必要はないからな。」
祖父は嬉しそうに言ってくる。
で、「良いところまで行ってるんだがなぁ~」と付け加えてくる。
「ええっ! そ、そうなの?」
哲司もその一言に嬉しくなる。そして、俄然、やる気が沸いてくる。
で、新聞紙をあっち向けたりこっち向けたりしておいてみる。
「もうひとつヒントをやろうか?」
暫くは黙って見ていた祖父だったが、やがて哲司の動きが止まったのを見計らって言ってくる。
「う、うん・・・。」
哲司は、テーブルの上から目を逸らさないで答える。
まだ、必死で考えている。
「昨日の晩、哲司が寝ていた部屋に行ってみろ。」
「ん? ど、どうして?」
「あの部屋、畳が敷いてあるだろ?」
「う、うん。」
「その畳の並べ方をよ~くみてみろ。」
「ええっ! 畳の並べ方?」
哲司は、思わず祖父の顔を見上げる。
(つづく)