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第9章 あっと言う間のバケーション(その47)

「・・・・・・。」

哲司は何も言えなくなっていた。最後に「勉強もな」と言われたこともあってだろう。



「じゃあ、そうして拡げてみな?」

祖父がそう言ってくる。それでもその場を動かない。

どうやら、哲司がやる様子をそこで見るつもりのようだ。


「ええっと・・・、こ、こうだよねぇ・・・。」

哲司は真剣になる。やはり、そうして祖父に傍に立たれると緊張もする。

で、さきほど祖父がやって見せたとおりに新聞紙の端を重ねるようにする。


「・・・・・・。」

祖父は何も返事をしない。つまりは、イエスもノーも言ってくれない。


「ええっと・・・、こうして、次は、こ、こうして・・・。」

哲司は、さらに3枚目の新聞紙をテーブルの上に乗せていく。


「ど、どこまで行くんだ? それだと、テーブルの全部が覆えんだろうが・・・。」

「ああ・・・、そ、そうか・・・。」

哲司は、新聞紙が一直線に並んで、既にテーブルからはみ出ていることに気が付く。


「う~んと・・・、じゃあ・・・、こっちに、こうして・・・。あれっ? ・・・。」

今度は、テーブルの短い方からはみ出る。


「な、簡単なようで、結構難しいだろ?」

祖父がそう言ってくる。

きっと、こうなるだろうと分っていたのだろう。だから、そこで見ていたのだ。


「ひとつ、ヒントをやろう。」

「う、うん・・・。」

哲司は、そのヒントに期待する。


「まずは、このテーブルの角を基準にするんだ。こういう風にな。」

祖父は、そう言って、テーブルの上にあった新聞紙をテーブルの角に合わせるように移動させる。


「で、次に、どうするかだ。

新聞紙は、見て分かるように、真四角じゃあない。長方形だ。

て、ことは、こっちとこっちの長さが違うってことだ。」

「う、うん・・・、そうだね。」

哲司も、祖父からそう説明されるとよく分かる。


「ということはだ。この角に合わせると言っても、こう向けに置くのか、あるいはこっち向きに置くのか。

それによって、随分と違ってくるだろ?」

祖父は、実際に新聞紙の向きを変えて見せながら言ってくる。


「あああ・・・、そ、そうだね、そうだね・・・。」

哲司は、ふと、何かに気が付いたような気がした。

そう、祖父が言った新聞紙の向きでだ。

祖父が実際に動かしたから、そこから何かを感じられたように思えたのだ。



(つづく)




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