第9章 あっと言う間のバケーション(その45)
「ああ・・・、こ、こういうことね?」
哲司は思わぬ発見をする。
そう、初めて新聞をバラバラにしてみてのことである。
哲司は、家で新聞を拡げるようなことはしたことがない。
それどころか、新聞を読んだ記憶もないし、読みたいとも思わない。
読めない漢字ばかりが並んでいるからだ。
見るのは、最終面にあった「テレビ欄」だけである。
だから、拡げる必要もなかったのだ。
毎週楽しみにしている漫画、つまりはアニメが放送される日。
それが確かに放送されるかどうかを、朝、その新聞のテレビ欄で確認をするのだ。
毎週何曜日と決まってはいても、野球のナイターなんかが入れば、そのアニメが放送されないからだ。
殆どの漢字が読めない筈なのに、どうしてかテレビ欄だけは読めたのだ。
何とも不思議なことではある。
(へぇ~・・・、新聞って、こ、こうなってるんだ。)
哲司が発見したのは、新聞というものは何枚かの新聞紙を重ねて作られているという事実だった。
何枚かの大きな新聞紙を重ねておいて、それを真ん中で半分に折ってあるのだ。
大人であればごく当たり前の常識なのだが、小学3年生の哲司にとっては、初めて知った驚きの事実だった。
「あれっ!?」
哲司がそう声をあげた。
そうなのだ。新聞紙ってのは、どれも同じ大きさだと思っていたのに、中から、その半分の大きさしかない新聞紙が出てきたからだった。
「こ、これって、千切れてる?」
哲司は、誰に言うでなく、そう口にする。
「ああ・・・、真ん中の紙面だろ?」
祖父が即座にそう言ってくる。
「それは、千切れてるんじゃない。もとからその大きさなんだ。
それはそれで、使うところがあるんだが・・・。
ま、一旦は、横に置いといてくれ。」
祖父はそうも付け加えてくる。
「えっ! 除けておくの?」
哲司は、祖父が言う意味が分からなかった。
「ああ、最初からそれがあると、きっと哲司が困るだろうからな。」
「?」
哲司は首を傾げる。
それでも、言われたとおりにその半分の大きさしかない新聞紙は横に取り出しておく。
「大きい新聞紙は何枚ある?」
祖父がそう訊いてくる。
きっと知っているだろうに・・・と哲司は思った。
(つづく)