第9章 あっと言う間のバケーション(その41)
「へぇ~・・・、そうなんだ・・・。」
哲司は、これまた一旦は納得をする。
「う~ん・・・。」
哲司は、それでも、どこかにまだ納得できないものがあるように思ってそう繋ぐ。
言葉を切ってしまうと、その納得できないことが思い出せないような気がするからだ。
「じゃ、じゃあ・・・、どうして、学校じゃあ、男にも掃除や給食を配ったりをさせるの?
あれって・・・、きっと、女の仕事でしょう?
家でも、お母さんかやってる。お父さんはまったくしないし・・・。
それなのに、どうして?」
哲司は、訊くというより、文句を言う。
もちろん、祖父が悪いとは思っていないのだが・・・。
「哲司、それって、当番制なんだろ? 掃除当番、給食当番っていう・・・。」
祖父は、少し考えるようにしてから、そう言ってくる。
「う、うん・・・。それはそうだけど・・・。」
「だったら、仕方が無いな。」
「ど、どうして? 掃除やご飯を作るってのは、やっぱり女の仕事じゃないの?」
「おぅ?! それって、誰が決めた?」
「う、う~ん・・・、でも、爺ちゃん、さっき、そう言ったんじゃない?」
哲司は、その点を強調する。
祖父が、「男の仕事、女の仕事」と分けて言ったからだ。
「そうだな。基本的には、男がやるべき仕事と、女がやるべき仕事は、はっきりと別れていると思う。」
「で、でしょう?」
「でもな、だからと言って、掃除や料理を男はしなくって良いんだとはならんだろ?」
「ど、どうして?」
哲司は、あくまでも両親のことが頭にある。
「だったら、爺ちゃん、飢え死にしてしまうじゃないか・・・。」
「えっ! ああ・・・、そ、そうか・・・。」
「爺ちゃんも、婆ちゃんが元気なときは、そうしたことは婆ちゃんに任せていた。
そして、その分、田んぼや畑での力仕事に精を出したもんだ。」
「・・・・・・。」
「だけどな、婆ちゃんが病気になってからは、そうは行かんようになって・・・。」
「・・・・・・。」
「だから、爺ちゃんも、最初は苦労したんだ。
それまでは、ご飯ひとつ炊いたことが無かったからな・・・。
もちろん、おかずなんて、何ひとつ作れんかった。
で、これじゃあ行かんと思って・・・。」
「で、どうしたの?」
「婆ちゃんに教えてもらったさ。
ご飯の炊き方、おかずの作り方、それに、洗濯の仕方もな・・・。」
「へ、へぇ~・・・、そうだったんだ・・・。」
哲司は、正直言って驚いた。
何でも出来て凄い祖父だと思っていたからだ。
(つづく)