第9章 あっと言う間のバケーション(その33)
「ん? って・・・、宿題って、出来てなくっても良いってこと?」
哲司はそう問い返す。
祖父の言い方がそう聞こえたからだ。
「んんん? だからな、結果じゃあないってことだ。
やったけれど、その答えが間違ってるってこともあるだろ?
頑張って必死で考えたけど、どうしても答えが出せない問題だってあるんだろ?」
「う、うん・・・。」
「それでも、良いってことだ。自分で懸命にやった結果なのであれば・・・だ。」
「う、う~ん・・・。」
哲司は納得できない。
宿題は、やはり「全問正解」でなければ・・・との思いが強いのだ。
宿題をするってことは、そういうことなのだと思っていた。
「誰かに横からその答えを教えてもらったり、あるいは、誰かの答えを見せてもらってそれを丸写しにするぐらいだったら、真っ白けで出した方がまだマシだ。」
「ええっ! 真っ白で?」
「そうでなければ、宿題をやる意味は無いだろう?
頭ではなく、手を動かすだけで終わってしまうんだからな。
つまりは、完全な誤魔化しだろ?
そういうのを、無駄な抵抗って言うんだ・・・。」
「う~ん・・・、それはそうだけど・・・。」
やはり、哲司はまだ納得出来ない。
「今でも、そんな宿題があるのかどうは知らないが、例えばだ、ある漢字をノートに10回書けって言われたとしよう。」
「う、うん・・・。」
「それを5回しか書かないってのは駄目だ。ましてや、“分かりませんでした”は通用しない。
少なくとも、習った漢字なんだろうから、教科書にはその見本が書き順と共に書かれてある筈だ。それを、“分かりません”とはならんだろ?」
「そ、そうだね・・・。」
「教科書をしっかりと見れば、誰でも出来ることだ。」
「う、うん・・・。」
「その一方で、例えば、哲司の苦手な掛け算の問題を解くような宿題があったとしよう。」
「うん・・・。」
哲司は声が小さくなる。
「そういうのは、いくら教科書を見ても、その答えが書いてあるものは滅多とない。
教科書には、例題は幾つか書いてあっても、それとまったく同じ問題が宿題に出ることはない。
つまりは、そうした算数のようなものは、やはり基本が分っていないと答えなんて出せないものだ。」
「そ、そうなんだよねぇ・・・。」
哲司は何度となく頷く。まさに、祖父の言うとおりなのだ。
そして、その基本とやらが分っていないから、未だに掛け算は勘で答えを書くだけになる。
「じゃあ、どうするか・・・なんだが・・・。」
祖父は、そこまで言っておきながら、その先をなかなか言わない。
(つづく)