表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
842/958

第9章 あっと言う間のバケーション(その31)

「ぼ、僕の脳味噌も、そう言ってるのかなぁ?」

哲司は自分に向けてそう問う。

そんな気もするし、そうでないような気もするからだ。


「だから、先生が、その脳味噌の代弁者になってくれてるんだ。」

祖父は水道の蛇口を捻って、洗い桶に水を溜めながら言う。


「えっ! ダイベンシャって?」

「哲司が聞いてくれないから、先生が脳味噌の代わりに言ってくれてるんだ。

今日習ったことをもう少し頭に押し込むようにってな・・・。」

「そ、それが、宿題ってこと?」

哲司は、きっと祖父はそう言いたいのだろうと思った。


「おお、そのとおりだ。よく分かってるじゃないか・・・。

だから、宿題はカップラーメンと一緒で、哲司の身体が欲しがっているんだ。

少々不味くっても、我慢して食うことが大切なんだ。

するとな、口に入れてしばらく噛んでいると、その宿題という不味いものが美味しく感じられるようになるんだ。」

「う、うっそう~!」


「い、いや、ほんとだ。

肉でも野菜でもそうだろ? 1回か2回噛んだだけで飲み込んでしまえば、美味いも不味いも分からんだろ?

しっかり噛む、しっかり噛み砕くことで、美味しさも分かるし、第一お腹に優しくなるだろう。消化が良くなるんだからな。」

「う、う~ん・・・。」


「そうした食べ物と一緒で、勉強ってのも、好き嫌いをしないでまずは何でも食べてみることだ。

そして、しっかりと口を、いや勉強の場合は頭をだが、それを動かすことで噛み砕くことが出来る。

そうすれば、どんどん入るようになる。」

「・・・・・・。」


「だからな、宿題は、その第一歩だ。

3度の食事を補うのがおやつでありカップラーメンであるならば、宿題は、学校での勉強を補う貴重なものなんだ。

嫌がってたら駄目だ。分かったか?」

「う。う~ん・・・、何となくは・・・。」

哲司は、「うん、分かった」と本当は言いたかった。

それでも、やはりまだそれをやりこなすことへのプレッシャーが重く圧し掛かっていた。


「工作の竹笛は、爺ちゃんが教えてやる。

でも、その他の宿題は、哲司が自分の力でやるんだ。

カップラーメンを食べるときでも、お母さんがいなければ、哲司、自分でお湯を入れるんだろ?

それと同じだ。やろうと思えば、出来る筈だ。」

「で、でも・・・、難しいものもあるんだよ?」

哲司は、下から祖父の顔を見上げるようにして言う。


「出来ないものは出来ないで構わない。それが宿題の本質だからな。」

「ええっ! ほ、ほんと?」

哲司の顔がぱっと明るくなる。



(つづく)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ